葛西純×川口潤監督×佐々木貴×佐藤優子　『狂猿』コメンタリー収録で明かされた演出秘話

　デスマッチファイター・葛西純のドキュメンタリー映画『狂猿』のBlu-ray＆DVDが11月17日に発売。音声特典となるオーディオコメンタリー収録が都内で行われ、主人公の葛西、葛西が所属するプロレスリングFREEDOMSの代表でありながら現役プロレスラーの佐々木貴、監督の川口潤、企画・プロデュースの佐藤優子が、撮影裏話を語った。

　本作はクレイジー・モンキー（狂猿）の異名を持つデスマッチのカリスマ・葛西を中心に、血と汗を流して闘うプロレスラーたちの姿を追ったドキュメンタリー。葛西の半生を収めるとともに、半年におよぶ長期欠場、コロナ禍という未曾有の事態に直面しながらのリング復帰を1年にわたり密着している。

　撮影は葛西が欠場に入った2019年12月25日後楽園ホール大会からスタートした。さっそく川口が「プロレスを休んでる時も痛むものなんですか？」と訊ねると、葛西は「ヘルニアになった首と腰は日常生活でも辛いですね」と即答。さらに、「プロレスをやっている時は受け身が厄介。怪我しないための受け身でもあるんだけど、首と腰にかかる負担をあらためて感じました。1カ月受け身を取らないだけで、こんなにもコンディションがいいんだ、みたいな」と笑顔を見せ、佐々木も「日常生活では受け身を取らないもんね」と共感した。

　翌2月には、葛西の思い出の地を巡りながらの密着取材を敢行。昔よく通っていた目当ての定食屋が定休日だったため、缶酎ハイを飲んでから取材に臨んだという葛西は、入門テストを受けるまでの経緯や、デスマッチへの恐怖心など、同僚レスラーには話さないような意外な言葉を次々口にする。当初、ここまでの話が聞き出せるとは思っていなかったという川口に対し、葛西も「はじめて言いましたもん。妻にも言えないし」と本音をこぼす。一転、食事シーンでは、「プロレスラーはもっと食べるのかと思っていた」とのコメントに「女子高生のほうが食べる」とおどけるなど、笑いも交えてトークを繰り広げていく。

　そんな中、映画は長期欠場の原因となった“首と腰”の精密検査のシーンに。主治医から「死ぬまでやっていいよ」とお墨付きをもらった葛西だが、復帰に向けてトレ―ニングを重ねる頃、新型コロナウイルス感染症が世界を席巻。復帰を予定していた4月のアメリカ大会が、中止になってしまう。

　6月10日に新木場1stRINGで行われた葛西の復帰戦について、FREEDOMSの代表を務める佐々木は、コロナ禍で興行をすること自体葛藤したことを明かし、葛西は「長い自粛を終え試合ができたことは嬉しいけど、ガラッと変わってしまった環境下で観る方もやる側も、お互い100％発散しきれていない感じだった」と当時を振り返った。

　そして7月28日、葛西は佐久田俊行との一戦を迎える。「後楽園（ホール大会）の復帰は“佐久田とやろう”と欠場中から自分の頭にあったので、（メディアに）フライング気味に佐久田の名前を出した」といい、佐々木も「それくらいじゃないと注目浴びないですよ。フライングできるやつって今いないから」と若手レスラーを鼓舞。葛西も「会社が敷いてくれたレールにのらない、自分で暴走するくらいになってほしいよね」と続けるなど、プロレス界の未来について熱い思いを語り合った。