赤楚衛二、桐谷健太らの好演が高める共感性 今回の『世にも奇妙な物語』はいつもと違う?

『世にも』’21秋の特別編の見どころは?

 『ふっかつのじゅもん』も、ラストに震える傑作だ。桐谷健太演じる主人公は、息子と実家の片付けをするなかで、自分が小学生の時にプレイしていた『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』を見つける。息子の隙をみてゲームで遊ぼうと、メモに書いてあった「ふっかつのじゅもん」を入力する。すると、どこからともなく同じ年頃の少年が現れるのだった。その少年になんだか見覚えのあった主人公。それが、小学生のころ親友だった良介であることに気づいたとき、今はいないはずの彼にまた会うために彼は再びゲームを起動させる。桐谷健太の泣きの演技が圧巻で、思わずもらい泣きしてしまいそうになるほどの感動作。よく「誰も予想できないラスト」なんて謳い文句を掲げる作品があるが、本作ほどそのラストを予測できなかったものはない。

 桐谷健太のように、物語に説得力を持たせる強い演技をみせてくれたのが、4作目の『金の卵』の山口紗弥加である。彼女も長年バイプレイヤーとして数多くの作品に出演しながら、最近は主演作が増えその存在感は増す一方だ。「綺麗で頼りがいのある姉御肌のお姉さん」の印象が強い彼女だが、本作で見せた顔は全くの別物だった。他の3作に比べて物語がシンプルだからこそ、彼女の独壇場として、その素晴らしいパフォーマンスで我々視聴者を引き込ませる。幸運の金の卵に取り憑かれた主婦の狂気を、見事体現した。

 4作全てが、それぞれの主人公の“冒険”を捉えた物語。イントロダクションでタモリが言った、安全で快適なものになってきたというそれは、どこか『世にも奇妙な物語』シリーズの変遷にもなぞらえることができると感じる。そして今回で舵をきり、本来の“冒険”の航路に戻ったかのような全作品の高い脚本力と、それぞれを組み合わせた隙のない構成力。そして、全ての作品に共通する、膝を打つラストに脱帽してしまう『’21秋の特別編』は、近年の中でもかなり質の高い放送回ではないだろうか。

■放送情報
土曜プレミアム『世にも奇妙な物語’21秋の特別編』
フジテレビ系にて、11月6日(土) 21:00~23:10放送
ストーリーテラー:タモリ

『優等生』
脚本:坂本絵美
演出:山内大典
出演:森七菜、奥平大兼、倉悠貴、オーイシマサヨシほか

『スキップ』
脚本:井上テテ
演出:松木創
出演:赤楚衛二、堀未央奈、坂口涼太郎、時任勇気、柳俊太郎ほか

『ふっかつのじゅもん』
脚本:畠山隼一
演出:石川淳一
出演:桐谷健太、野波麻帆、石田星空、笹木祐良ほか
協力:株式会社スクウェア・エニックス
「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」
(c)1987 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
(c)SUGIYAMA KOBO
「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」
(c)1988 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
(c)SUGIYAMA KOBO

『金の卵』
脚本:三輪江一
演出:山内大典
出演:山口紗弥加、長谷川朝晴、小野莉奈

編成企画:渡辺恒也、狩野雄太
プロデュース:中村亮太、関本純一
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/kimyo/
公式Twitter:@yonimo1990

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