『大豆田とわ子と三人の元夫』メイキング集は必見の内容 成功の理由がわかる強いこだわり

『まめ夫』メイキング集は必見の内容

 2021年の春クールに放送された『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系、以下『まめ夫』)のBlu-ray&DVD-BOXが、11月5日に発売される。

 本作は、建設会社「しろくまハウジング」の社長・大豆田とわ子(松たか子)が主人公のテレビドラマ。とわ子は3回結婚して3回離婚しており、一人目の元夫はレストランオーナー兼ギャルソンの田中八作(松田龍平)、二人目の元夫はファッションカメラマンの佐藤鹿太郎(角田晃広)、三人目の元夫はとわ子の会社で顧問弁護士を務める中村慎森(岡田将生)。物語は、とわ子が亡くなった母親のメールを開くために元夫に会いに行くところから始まる。

 脚本は坂元裕二、プロデューサーは佐野亜裕美。二人は2017年に『カルテット』(TBS系)を手掛けたコンビ。『カルテット』もそうだったが、『まめ夫』ではおしゃれな映像と小粋な台詞のやりとりが延々と続き、一見するとひたすら楽しいラブコメに見える。同時になんとも言えない不穏な気配が常に漂っており、コメディと思っていたらホラーに変わり、ホラーと思ったらコメディに変わるという、先の展開が全く読めない不思議な手触りの残るドラマだった。こういったドラマが民放の地上波のプライムタイムである火曜夜9時台に放送されていたというのは極めて異例なことだ。

 ゲストラッパーが多数参加しているSTUTS & 松たか子 with 3exesによる主題歌「Presence」が流れる、毎週映像と歌詞が変わるエンドロールや、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の中江和仁、『プリンセスメゾン』(NHK BSプレミアム)の池田千尋、オフィスクレッシェンド出身で堤幸彦の弟子にあたる瀧悠輔という異色のディレクター陣を起用したおしゃれな映像は大胆かつ刺激的で、まだまだテレビドラマは「先鋭的で面白いことができる」と証明した貴重な作品だったと言えるだろう。

 そんな『まめ夫』がついにソフト化されるのだが、筆者は一足先に特典となるロングメイキング集を視聴させていただいた。

 クランクインからクランクアップまでの撮影風景をつないで見せていくメイキング映像は、テレビドラマ本編を楽しんだ視聴者にとっては、撮影の内幕を知ることができるボーナストラックといった感じで、作品ファンなら特に嬉しい仕上がりだろう。

 同時に、撮影風景全体を捉えた映像が興味深いのは、本編では映らないフレームの外側が堪能できること。ガンマイク、カメラ、レフ板、そして大勢のスタッフが取り囲む中で俳優が演技していることがよくわかり、こういう不自然な状況で自然な芝居をおこなっていた俳優陣の凄さに改めて驚かされた。

 また、スタッフ全員マスク着用で出演俳優もリハーサルではマスクをしている。本作は現代を舞台にしているが、意図的にコロナ禍の状況は描かれておらず、登場人物もマスクを付けていない。そのため『まめ夫』を観ている時はコロナのことを忘れて作品世界に没入していたのだが、本作もまた「コロナ禍に撮影されたドラマだった」のだと、メイキングを観ると実感する。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる