『おかえりモネ』が発信してきた“変わってもいい”というメッセージ 耕治の名前の由来も

『おかえりモネ』が伝える“変わってもいい”

 ついに美波(坂井真紀)の死亡届に印を捺した新次(浅野忠信)。『おかえりモネ』(NHK総合)第114話は、そんな彼の強い決断に周りの人間……特に、耕治(内野聖陽)が触発された。

 緊迫感と悲壮感、ありとあらゆる感情が画面上に溢れ出てしまうような浅野忠信の圧巻の演技が印象的だった前回。嗚咽しながら判を押した新次は、その後少し落ち着いた様子で龍己(藤竜也)に礼を言う。龍己は、雅代(竹下景子)の仏壇の方を見ながら、「あそこに収まっていると、案外近くにいる気がしてたくさん話しかける。寂しいことはないよ」とフォローした。新次は常に自分をサポートしてくれる人たちに囲まれてきたが、なかでも龍己は同じように愛する妻に先立たれた先輩で、あの場で唯一経験者としてその気持ちに寄り添える人物だったのだ。

 雨が降ってきた。「全てが整うと雨が降る」と、以前サヤカ(夏木マリ)の言っていた言葉を思い出して口にする百音(清原果耶)。そのつぶやきは、雨が降っている中でも構わず車で亮(永瀬廉)を送っていこうとする未知(蒔田彩珠)と、彼に投げたものだった。未知の想いを、「だめだ、まだケリついていない。もう少し時間くれる?」と保留にした亮。その“ケリ”は新次を以前のように元通りに……彼が幸せを感じられるようにすることを指していたことが前回からうかがえる。しかし、死亡届をめぐり、そこでようやく親子の会話を経て父が本当に求めていること、元に戻ることはないことを知った。この時、新次に「幸せになっていいんだよ」と切に訴える耕治の姿が、永浦姉妹と亮に重なる。こうして、父が前に進んだことで“全てが整った”。百音が2人に向かって言った言葉は、これから亮が未知に向き合うことを示唆しているのかもしれない。

 新次の決断をきっかけに、皆がそれぞれ感化されて自分の問題に向き合おうとする。未知と亮だけでなく、耕治もまた永浦水産の看板を手に取り、しばらく考え込んでいた。そして開かれる家族会議で、改めて龍己に「海の仕事がやりたい」と話す。しかし、耕治が継ぎたかったのは永浦水産というビジネスではなく、その奥にある龍己の精神だった。被災したことでたくさんの物を失い、銀行に融資を求めてやってきた人たちがする、父の話。何度壊されても挫けずに、立て直す精神の持ち主がいるから周りも頑張ってみようとなれる。「そういう人は、大事だ。そういう場所が、世の中には必要なんだよ」と力強く話す耕治。この話も結局、街の人が龍己に触発されたことと、新次の踏み出した一歩に耕治が感化されて頑張りたいと思えた構図が繋がっているのだ。

 そしてこの時、粗暴な口調のやりとりが2人の間で続き、ある種の軽快さまで感じさせるのだが、そこでの耕治のさりげない一言が心に刺さった。

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