遠藤雄弥×津田寛治×松浦祐也『ONODA』鼎談 今の時代と繋がる小野田寛郎の生き様

『ONODA』で体験、小野田寛郎の生き様

 太平洋戦争後、約30年間にわたって、フィリピン・ルバング島で過ごした日本兵・小野田寛郎の実話をベースに、フランスの新鋭実力派のアルチュール・アラリ監督が描いた人間ドラマ『ONODA 一万夜を越えて』。本作は2018年11月から2019年3月まで、カンボジアの過酷なジャングルで撮影された。

 青年期の小野田を演じた遠藤雄弥、同じ小野田の成年期を演じた津田寛治、小野田と最後まで行動を共にした小塚金七の青年期を演じた松浦祐也の3ショット対談が実現。撮影時の裏エピソードや、それぞれのパートを観て感じたこと、また今の時代にこの物語が放たれる意味などを語り合った。(望月ふみ)

全員オーディションを受けての出演

――出演はオーディションで決まったとか。みなさん世代が違うので、小野田さんに関する前情報も異なりそうです。

津田寛治(以下、津田):そうですね。僕は子どもの頃に記者会見をリアルで見てました。単純に、小野田さんの物語を今やるのは面白いなと思いましたね。日本人だとあまり思いつかないなと。小野田さんは、山本五十六さんとか、東條英機さんたちとはまたカテゴリーが違うので、まったく違う戦争映画になる予感がありました。オーディションを前に脚本を読んで、こんな日本軍の描き方は見たことがないと感じました。すごく冷静でクールな日本兵たちだったので。

遠藤雄弥(以下、遠藤):僕もオーディションの際に脚本を読みました。正直、小野田さんと横井庄一さんのどっちがどっちだ? くらいの知識だったので、脚本を読んで、「こんな方がいらっしゃったんだ!」というのがシンプルな思いでした。そしてこれをフランスのクリエイターがやるんだと。純粋に興味がわいてオーディションを受けました。

松浦祐也(以下、松浦):僕は実は、2回オーディションのお話を断ってるんです。

津田:ええ! そうなの!? なんで?

津田寛治

松浦:いや、いわゆる英雄譚になるんじゃないかと思ったんです。海外の監督がやりがちな日本兵が出てきたり。よくわからないジャパンになったらイヤだし。

津田:日の丸背負ってね。それが、なんで結局受けたの?

松浦:3回目のお話しのときに、脚本も送ってもらって読んだら、「うわ、しっかりしてる」と思って。現地の人たちへ行った行為や、早川小隊のこともちゃんと出てきていたし、これならやってみたいなと。

津田:よく調べてるんだね。カンボジアの撮影のあと、街に遊びに行ってただけじゃないんだね。俺は市場とか屋台とかで絶対食事するなと言われてたのに、よく行ってたんでしょ?

遠藤:行きましたよね。サメの鍋とか食べたり。

遠藤雄弥

――松浦さんは、現地でお腹を壊したと聞きましたが。

松浦:大変でしたよ! カンボット下痢ってやつなんですけど。

津田:カンボット下痢?

松浦:いや、オレが名前をつけたんですけど。最初、早川少尉を演じた吉岡睦雄さんがすごい下痢になったんで、みんなに「やばいぞ!」と伝えて、それが自分も大変なことになって。

津田:やっぱり食事?

遠藤:たぶん撮影の雨降らしの水なんじゃないかと。

松浦:日本だとタンクの水を使うんですけど、その辺の川の水を散水車のホースで汲んで使ってたんですよ。それをバンバン顔で受けてたら……。もう大変でしたよ。でも苦労したかいがありましたよ。後半パートに移る雨のシーンも、千葉さん(成年期の小塚)が、僕の芝居にだいぶ寄せてくれて。

過酷な撮影のなか「憑依」とも思える出来事も

津田:後半パートの登場シーンね。雨を見上げて千葉さん演じる小塚が、顔に受けた雨を手でかきあげるしぐさ。あれは演出ではなくて、千葉さんがやったんだよ。監督がそれを見て、前半パートの松浦くんが同じことをやっていたと。それで全く同じカットで撮ろうということになって。

松浦:演出じゃなかったんですか!?

津田:うん。偶然。確かに松浦くんの小塚が、千葉さんに憑依した感じはあったね。

松浦:僕は、自分が遠藤くんの小野田にやっていたある種の甘えみたいな感じを、千葉さんが津田さんにされているのを見て、「すげーバイブスだ!」って思ってました。

津田:カメラが回ってないときは、俺がいっぱいいっぱいのときに、千葉さんが話を聞いてくれて、すごく助けられたからね。それは遠藤くんも松浦くんに対して同じ思いでしょ?

遠藤:本当に、松浦さんなしでは成立しませんでした。

松浦祐也

松浦:いや、僕は、「隊長どの! 隊長どの!」ってやってただけですから。そうそう、最初のほうで、遠藤くんが40度くらいの熱を出したときがあったんです。

遠藤:みなさん体調崩してましたよね。僕はあのタイミングでしたが。

松浦:僕が40度の熱を出したら撮影止めるけど、遠藤くんは現場に来て普通に撮影してたんです。でもテスト中に、具合が悪そうだったから「大丈夫?」って顔を窺ったら、遠藤くんの目が血走ってて、これはヤバイと思って額に手を当てると、もう熱くて熱くて! でもその後の撮影もちゃんとやってて、「自分はこの人についていくぞ、この人にだったら抱かれてもいい」と思いました。

遠藤:(苦笑)。

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