『賢い医師生活』が描いた人間の成長と愛すべき姿 作品に込められた監督の願いとは

『賢い医師生活』に込められた監督の願い

キム・ジュンワンが体現する人間らしさ

 胸部外科准教授のキム・ジュンワン(チョン・ギョンホ)は、無愛想かつ患者にもズバズバと物言う性格で、一見冷たい人だという印象を受ける。また、シーズン1の第7話では、手術後の家族への説明の際、成功したにも関わらず「時間がかかりました。手を切りたいほど……途中うまくいかず……」と、患者も筆者もドキッとするようなことを言い、隣にいた後輩のト・ジェハク(チョン・ムンソン)がすかさず「でも成功しました」と笑顔でフォローすることに。ジュンワンにとっては、患者や家族がどう感じるかよりも、事実を率直に伝えることが大事なのだ。ジェハクには、「先生は結論を先に言うべきです」と諭される始末。しかし、この愛弟子のジェハクと、99ズのファンは知っている。誰よりも彼の情が深く、傷つきやすいということを(イクジュンいわく、外カリ中トロ)。そのことがより描かれたのが、シーズン2だった。

 シーズン2の第4話では、遠距離恋愛をしていた最愛のイクスン(クァク・ソニョン)に突然の別れを告げられ、傷心のジュンワン。いつもの99ズでの食事にも参加せず、ジョンウォンの電話にも出ない。しかし、落ち込んでいる最中にユルジェ病院で一番長くVAD(人工心臓)をつけていた子ども、ウンジのドナーが見つかった電話を受け、目の色を変えて走り、ウンジの母親にそのことを伝える。公私を切り替えた瞬間のジュンワンは、それまでに見たことがない表情をしていた。誰よりも優しい心を持っているからこそ、ジュンワンにはその切り替えが必要なのだ。

 一方、ジュンワンとは対照的に素直な性格をもつジェハクが側にいる影響もあり、シーズン2では積極的に患者と関わる場面も見られた。ジェハクに教わったSNSで、集中治療室に入院する患者の話し相手を募集した際には、「キム先生は、本当にわからない人ですね」と評されている。やはりジュンワンは、99ズのなかでも知れば知るほど情深い人なのではないかと、筆者は思っている。

 他にもシーズン2では、イクジュンの告白を受けて断るものの、再度恋をするソンファの心境の変化や、一人を好んで生きてきたソッキョン(キム・デミョン)が後輩のチュ・ミナ(アン・ウンジン)からの恋愛的アプローチを受けるなかで、人とコミュニケーションが取れる人間に変わろうと努力する姿、これまで恋愛をしてこなかったジョンウォン(ユ・ヨンソク)が、恋人チャン・ギョウル(シン・ヒョンビン)に患者の子どものように優しい眼差しで接する姿など、99ズのより人間らしく、時に不器用に葛藤する愛すべき姿が描かれた。

 『賢い医師生活』を観ると、優しい気持ちになることができるという感想をよく耳にする。筆者もその感想をもつ一人だ。そしてそれは、人間を一面だけで判断しない、“世界中の人が良い人であってほしい”というシン・ウォンホ監督の願いを感じるからではないだろうか。身の回りの日常を、時間をかけて知ること、そして愛していくことを丁寧に描いたこの作品には、そんな想いが溢れている。最終話を終えた今、“賢い生活”は、生活のなかで互いを理解しようという努力を怠らないこと、そして他者の日常を尊重しながらも自身の日常を育んでいくことだと感じる。

[슬기로운 의사생활 시즌2 OST Part 6] 미도와 파라솔 (Mido and Falasol) - 슈퍼스타 (Superstar) MV

 最後に、シーズン2の第6話のバンド演奏で歌われた「Superstar」の和訳歌詞を残したい。

“大丈夫 うまくいくよ

私たちはあなたを信じて疑わない

君だけの生きていく理由

それが何であれ

後悔なく生きるなら

それがスーパースター”

■配信情報
『賢い医師生活』
Netflixにて配信中
写真はtvN公式サイトより

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