『おかえりモネ』菅波の魅力はギャップにあり? 安達奈緒子らドラマの名手が描く男性像
この“二面性”という意味では、相当大きな“ギャップ”を見せてくれたのが『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系、以下『まめ夫』)に登場した小鳥遊大史(オダギリジョー)だろう。主人公のとわ子(松たか子)とは、ビジネス上で敵対する相手として描かれるも、そこで見せる私情を一切挟まぬ顔とプライベートで見せる柔和で穏やかな顔が全く異なり、最初はとわ子を惑わせる。しかもその切り替えがあまりに自然体で、彼には何の気まずさも違和感もなく、相反する立場や状況を矛盾とも思わずに彼自身はすんなりと受け入れている様子。本心がどこにあるかわからず、その掴みどころのなさがまた魅力を倍増させていた。プライベートの小鳥遊は驚くほどマイペースで、そして無防備なのがまた罪深い。ビジネスシーンで見せる淡々とした理詰めとは全く違い、プライベートでは何か答える時にも即答はまずなく、冒頭に毎回少し考える時間を置いてからゆっくりと話し始める。こんな緩急を、こんな“隙のなさ”と“余白”を交互に見せられてしまえば、自分にだけ手の内を明かしてくれているのだと、自分だけが彼の誰も知らぬ一面を、その両面を知っているのだと惹かれていくだろうし、もっともっと彼のことを知りたいと思ってしまうだろう。
『まめ夫』の脚本を手掛けた坂元裕二作品でいうと、『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)で主人公・たま子(真木よう子)と仕事上敵対していたシェフ・門司誠人(東出昌大)も一見クールで毒舌、ぶっきらぼうながら何とも憎めない一面を覗かせ、たま子に不器用なりに寄り添っていく姿が印象的だった。
いかにもな王子様に突然一方的に助けられるのでも、ここではないどこかへ連れ出してくれるのでもなく、かといっていきなり自分を違うステージや世界に引っ張り上げてくれる御曹司でもなく、やはりリアルに女性が求めているのは“対話”しようと耳を傾けてくれ、自身も心開いてくれるような“弱さ”や“傷”を共有し合える相手なのかもしれない。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK