『偽りの隣人』はタイトルとのギャップに驚くこと間違いなし 裸で向き合うことの大切さ

タイトルとのギャップに驚く『偽りの隣人』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、漫画『ゴールデンカムイ』を一気読みして気持ちは五稜郭のチタタプ石井が、韓国映画『偽りの隣人 ある諜報員の告白』をオススメします。

『偽りの隣人 ある諜報員の告白』

 漫画『ゴールデンカムイ』の最新話までの全話無料公開が、大好評につき9月20日まで延長されました。まだ読んでいない方も、『花束みたいな恋をした』の麦くん(菅田将暉)のように途中で止めてしまった方も、この機会に読むのをオススメします。ミステリーであり、コメディであり、グルメ漫画とも言える『ゴールデンカムイ』。味方だと思ったあいつが実は敵側で、敵だと思っていたあいつが実は味方で……と、物語の面白さも語りだしたらきりがありませんが、シリアスな展開の中にも必ず笑いがあるのが『ゴールデンカムイ』の魅力だと個人的には感じています。

 無理やりつなげた形になりますが、そんな『ゴールデンカムイ』の面白さとも共通点があるのが韓国映画『偽りの隣人 ある諜報員の告白』。感動ヒューマンドラマ『7番房の奇跡』(Netflixで配信されているのでこちらもオススメです)のイ・ファンギョン監督が手がけた“社会派”ドラマです。

 時代は1985年、民主化運動が激しさを増す軍事独裁下の韓国を舞台にしています。『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』、『1987、ある闘いの真実』など、同時代を描いた良質な韓国映画が近年公開されていましたが、いずれの作品も擬音で表現するなら「ドスン」とした濃厚な作品だったかと思います。一方、本作を表現するなら、「チタタプ!」といった感じです。『ゴールデンカムイ』未読の方には意味不明かと思いますが、何が言いたいかというと、タイトルの固さとは裏腹に、とにかく笑える、それでいて考えさせられる一作になっているのです。

 野党総裁のイ・ウィシク(オ・ダルス)は軍事政権から目の敵にされ、軟禁状態を強いられます。家族にも極秘で国家安全政策部の熱血職員として働くデグォン(チョン・ウ)は、ウィシクを共産主義者に見立て逮捕をするべく、チームを組んで24時間体制で彼を盗聴するミッションを開始。しかし、盗聴を通じてデグォンはウィシクの人柄に惹かれていき、過激さを増す上層部の思想に疑問を持ち始めるのだが……というのが本作の大まかなあらすじです。

 盗聴を通じて相手の心に触れる、その後に待っている悲劇と救済という展開は、同じく“盗聴もの”映画である『善き人のためのソナタ』とも非常に似ています。しかし、決定的に違うのは、本作の“笑い”にかける描写がとても多いこと。とにかく、デグォンと盗聴チームを組む、ドンシク(キム・ビョンチョル)とヨンチョル(チョ・ヒョンチョル)の愛すべきポンコツコンビが面白いです。盗聴チームは相手に何をしているかバレてはいけないため、あの手この手で探りを入れながら嘘を付き、家に侵入したときは、絶対に見つからないように身体を駆使してさまざまな動きを繰り広げます。まるで、アンジャッシュのネタのようなすれ違いコント。もちろん、これもやりすぎては“寒い”ものになってしまいますが、映画のリアリティを壊さないギリギリのところで留められているところにセンスを感じました。



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