『転スラ』なぜ人気シリーズに? キャラの深部を描く物語の魅力
また第2期では、監督が第1期を手がけた菊地康仁から副監督だった中山敦史に交代。作画のテイストも若干変わっていることに、作風・狙いの変化を見て取ることができるだろう。
1期は序盤からバトルシーンが多めということもあり、髪のなびき方や動かし方などに独特のスピード感やケレン味が利いた作品だった。大賢者がリムルと会話するシーンやバトルシーンでのグラフィックデザイン、3D、CGなどのエフェクトにどことなくファンタジーゲームっぽさを持たせたりアイデアと工夫を感じさせてくれた。
2期に入るとそういった部分を踏襲しつつ、各キャラクターの表情や身振り手振りを、より豊かに細やかに描いたシーンが目立つ。2話序盤で森中を破壊しそうなほどの光弾をコントロールしきれずに焦って涙をみせるシオン、19話序盤で危険な戦場へと参じようとするシュナの活き活きとした瞳や顔立ち、戦うときに見せる各キャラクターの苦悶、または日常パートで描かれる国民たちの笑顔など、2期では要所要所で顔の表情・身振りに注力した作画・絵コンテがなされている。それによって、ユーラザニアの三銃士や、ファルムス王国のヨウム、ミュウラン、グルーシスの想いに視聴者は引き寄せられるのだ。
『転スラ』の魅力の一つとして「外交・政治」にも目を向けているということが挙げられよう。ファンタジー世界を舞台にしたバトル作品というと、やはり華となるのはキャラクター同士のバトルなのは間違いない。だが「人間と魔物が共に歩ける、種族問わず楽しく過ごせる国」という理想を形にすべく奔走するリムルを描く本作は「外交・政治」のシーンが実はかなり強く描かれている。
実際、この2期において印象的なのはリムルを筆頭にした幹部や他王国をも含めた話し合いのシーンだ。ストーリーの進行上、ベニマルを筆頭にした他のキャラクターにもスポットが置かれる場面が多々あることを踏まえ、活き活きとした動き・姿でキャラクターたちの存在感を損なうことなく、物語自体の魅力も描くことに成功している。
本作が人気シリーズになったことによって、バトルに次ぐバトルで視聴者を興奮させるような作品にするのではなく、数年以上に渡って描かれること見込んだ大河ドラマ・戦争ドラマのようなアニメ作品にすることになったのだろう。この後に続いていくサーガとパラレルワールドによって、本作はこの先どれほどに続いていくのか改めて注目していきたい。
■ 放送情報
『転生したらスライムだった件 第2期』第2部
TOKYO MXほかにて、毎週火曜23:00~放送中
キャスト:岡咲美保、豊口めぐみ、前野智昭、古川慎、千本木彩花、M・A・O、江口拓也、大塚芳忠、山本兼平、泊明日菜、小林親弘、山口太郎、福島潤、田中理恵、日高里菜、春野杏、櫻井孝宏、子安武人、石田彰
原作:川上泰樹、伏瀬、みっつばー『転生したらスライムだった件』(講談社『月刊少年シリウス』連載)
監督:中山敦史
シリーズ構成:筆安一幸
キャラクターデザイン:江畑諒真
モンスターデザイン:岸田隆宏
美術監督:佐藤歩
美術設定:藤瀬智康、佐藤正浩
色彩設計:斉藤麻記
撮影監督:佐藤洋
グラフィックデザイナー:生原雄次
編集:神宮司由美
音響監督:明田川仁
音楽:Elements Garden
アニメーション制作:エイトビット
(c)川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会