『スザンヌ、16歳』に詰まったフランス映画の醍醐味 小柳帝が作品の背景を解説
『スザンヌ、16歳』が8月21日、東京・ユーロスペースで公開され、編集者・ライターの小柳帝がトークショーを行った。
本作は、2020年カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクションに認定されたフランス映画。名優ヴァンサン・ランドンとサンドリーヌ・キベルランの長女である20歳の新鋭スザンヌ・ランドンが脚本、監督、主演を務めた。
同年代の友人たちに退屈していた16歳のスザンヌは、ある日、劇場の前で、年の離れた舞台俳優ラファエルと出会う。彼もまた繰り返される舞台や仲間たちとの付き合いに退屈しており、2人はすぐに恋に落ちる。しかしスザンヌは、彼に夢中になればなるほど、自分が人生を見失っているのではないかと恐れはじめる。自分が思い描いていた“16歳の時”が、どこかに消えていってしまいそうで……。
小柳は、今作を「16歳という年齢の淡い初恋を描く爽やかな作品」とし、スザンヌ・ランドンが15歳の頃、「映画化することを意識せずに書いていた脚本のようなものが、この映画につながっている」と説明。「実際、彼女も劇場の前に立っていた俳優らしき人が気になったようです。その人と言葉を交わすことはなかったらしいですけど、自伝のような作品ともいえるのでは」と話した。
また本作のみならず、彼女の成長にもプラスの役割を果たした作品として、『なまいきシャルロット』(1985年)と『愛の記念に』(1985年)を紹介。「スザンヌさんは自分の名前が気に入っていなかったみたいなんですけど、『愛の記念に』に“スザンヌ”という役名の人物が出てくるんです。大好きな作品に“スザンヌ”が使われていることで、自分の名前にも自信が持てたのでは」といい、「今作(『スザンヌ、16歳』)の中でも“スザンヌ”と書かれた映画のポスターを貼ることで、オマージュを捧げている」と語った。
ほかにも、本作に影響を与えた作品に『ディアボロ・マント』(1977年)をあげ、「ディアボロ・マントはミントシロップのソーダ割りで、フランスのカフェで子どもたちにも飲まれている飲み物。今作にもグレナデン・ソーダというザクロシロップのソーダ割りが登場しており、これは同作へのオマージュ。本編だけでなく、それらの作品とのつながりを見ていくのもおもしろい」と小柳。劇中で使用されている劇場が、モンマルトルに実在する小劇場アトリエ座であることにも触れ、「実際にある劇場を使っていることで、舞台に対するオマージュも感じられる」と、数々のリスペクトが込められた作品であることを明かした。