『おかえりモネ』の舞台装置を繋ぐのは“水”? “出会い”の場所がコインランドリーの理由

『おかえりモネ』の舞台装置を繋ぐ“水”

 東京編が始まった第10週から第13週にかけて主に描かれたのは、「誰のため/何のために働くのか」「誰かのためを思って行動することは本当にその人のためになるのか」という2つの問いだった。

 百音が「人の役に立ちたい」と思うことに対する、第57話における神野(今田美桜)の「結局は自分のため」であり、「永浦さんて、ちょっと重いよね」という発言は、百音と視聴者の心にグサっと突き刺さった。その後も、「娘たちを思っての言葉が、逆にプレッシャーになったのではないか」と未知(蒔田彩珠)を気遣う亜哉子(鈴木京香)の姿が描かれるなど、安達奈緒子脚本は、安易に善意の押し付けを描こうとしない。

 いくら相手を尊敬し、相手のためになると思って情熱の限りを尽くして導こうとしたとしても、それが本人のためにならないこともある。かつて菅波が、患者(石井正則)のためを思うあまり選択を間違え、その情熱に押され、意見に従った患者の運命が悪い方に転がってしまったように。

 どんなに完璧な理解者が傍にいたとしても、人生全てを委ねることがあってはならない。自分の人生は最終的には自分で決めなければならないのだ。それぞれがちゃんと自分の信念を持ち、自分の決断に責任を持ち、過度に相手に寄りかかり過ぎず、バランスを保ち、すっくと立つ。それが自分だけでなく、相手を守ることにも、もっと言えば回りまわって誰かの幸せにも繋がることがある。それはまるで、登米の山で真っ直ぐに伸びている木々の姿を思い起こさせる、あるべき人間の姿だ。そして何より、第64話における鮫島の圧巻の走りは、その全てを体現していた。

 第65話終盤、菅波の過去を知り、百音は、菅波の、その未だ癒えない古傷を手当てで治そうとでもするかのように、彼の背中に手を置いた。彼女の手の温もりが、菅波の心に届いたのだとしたら、もどかしい2人に、今度こそ何かが起こるのだろうか。そして、今週は『きのう何食べた?』(テレビ東京ほか)コンビである西島秀俊・内野聖陽演じる朝岡・耕治の2人が、テレビの画面越しではなく遂に本当に出会うとのこと。ワクワクが止まらない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

 

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