林遣都が“犬目線での演技”を披露? 本格派“犬バカ映画”『犬部!』に覚えた違和感の正体

『犬部!』に感じる愛おしい違和感

 ん? なんだか妙だぞーー林遣都が数年ぶりに主演を務めた映画『犬部!』を観始めてすぐ、なんとも言えない違和感を感じてしまう。筆者だけだろうか? いや、多少なり違和感を覚えた方はいるのではないかと思う。とはいえ、それは鑑賞しているうちにしだいに薄れていく。もちろん、上映尺が114分の本作に触れているうちに、“慣れていく”というのも一つあるとは思う。しかしこの違和感のヒミツは、冒頭でしっかり告げられているのだ。そう、本作は“犬バカ映画”なのである。

 この「犬バカ」という言葉は、大原櫻子演じる佐備川よしみが口にするもの。林が扮する花井颯太と、中川大志演じる柴崎涼介を指してのことだ。むろんこれは彼らへの“dis”ではない。犬を愛し、奮闘する者たちに対する最大級の褒め言葉。この「犬バカ」という言葉が、本作の違和感の理由をも指し示しているのである。


 行き場のない犬や猫のために人生をかける若者たちの奮闘劇である本作のあらすじを、ざっくりと記してみよう。主人公・颯太(林遣都)は大の“犬バカ”で、捨て犬たちを自宅アパートに片っ端から保護してしまうような青年。「殺処分ゼロ」を目指し、医学部で獣医学を専攻している。しかし彼は、獣医師になるのに必須とされている外科実習(※動物を安楽死させるもの)に対して断固拒否の姿勢を取っているのだ。そんな颯太の周りには、彼と同じように犬や猫を愛する柴崎(中川大志)や佐備川(大原櫻子)、秋田智彦(浅香航大)たち学生が集まってくる。そこで颯太は「犬部」を発足させ、「生きているものは全部助ける」の精神で突き進んでいくのだ。ちなみに「犬部」とは、青森県十和田市の北里大学獣医学部に実在したサークルである。

 さて、この物語のあらすじを見て分かるように、主人公の颯太は動物たちに対してひじょうに愛情深い男である。本作の違和感の要因について筆者は、この颯太役の林の演技にあるのではないかと考えている。とはいうものの、何も彼の演技をくさしているわけではない。林のキャリアを振り返れば明らかだが、どこからどう見ても彼は同世代の俳優たちの中でも最前線に立つ存在だといえるだろう。映画、ドラマ、舞台と、媒体の性質や作品のタッチに合わせて、柔軟かつ的確に演じ分けることができる稀有な俳優だ。そんな林の『犬部!』での演技に関して端的に挙げられるのが、かなりオーバーな演技を“実践”しているということだ。

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