『ココ・シャネル 時代と闘った女』が暴く実像と生涯 100年後も廃れない装いと精神に触れる
シャネルは素直に、かっこいいと思えるアイコンだ。だからこそ、多くの者を魅了し、多くの映像作品でその人物像が描かれてきた。彼女の残した数々の言葉は、「私も常にその精神でいたい!」と思わせる。だから、「特に用事ないし」と手抜きの装いで家を出かけた日に限って重要な局面に立つたびに、「その日ひょっとしたら、運命の人と出会えるかもしれない。その運命のためにも、できるだけ可愛くあるべきだ」という彼女の名言を思い返えして、反省することも。
しかし、一方で本作はこれまで称賛ばかりされてきた彼女にとって不都合な事実……戦時中のドイツとの交流についてもしっかり触れられている点が新鮮だ。フランスの伝記作家であり、オドレイ・トトゥ主演の『ココ・アヴァン・シャネル』の原作者エドモンド・シャルル・ルーも、「彼女が尊敬すべき人間なのか、軽蔑すべき人間なのか、はたまた彼女を許すべきなのか、許してはならないのか、わからなくなってしまう」と、遺している。
時代と闘った女の物語。本作を上映している渋谷Bunkamuraに隣接している東急本店も、2023年の春に営業を終了することが先日決まった。Bunkamuraはこれまでも数多くのファッション系ドキュメンタリー作品を上映し、そのラグジュアリーな立地環境と作品の親和性も高かった。映画を観た後に、そのブランドのショーウィンドウを眺めにいき、浸ることもしばしば。しかし、コロナの影響でファッション業界も大きな痛手を追ってしまったし、それに伴って街の景色も変わっていく。だからこそ、そんな変わりゆく時代の中でシャネルのように信念を持って、自分も闘い続けていきたいものだ。
■公開情報
『ココ・シャネル 時代と闘った女』
公開中
監督・脚本:ジャン・ロリターノ
ナレーション:ランベール・ウィルソン
字幕:松岡葉子
配給:オンリー・ハーツ
フランス/2019年/55分
(c)Slow Production, Arte France