古川雄大、“完璧な王子感”で作品の世界観を成立 『女の戦争』は夏ドラマのダークホースに

古川雄大、『女の戦争』で“完璧な王子感”

 夏ドラマにダークホースが現れた。

 テレビ東京系・サタドラ枠で放送中の『女の戦争~バチェラー殺人事件~』。医療ものや警察もの、ラブストーリーが目立つ今期、少々異彩を放つミステリータッチの深夜ドラマだ。ここではその見どころと、これがテレビドラマ初主演となる古川雄大について語っていきたい。

 白いタキシードに身を包んだ鳴戸哲也(古川雄大)が結婚式場の庭園で血を流し、息絶える場面から物語が始まる。時をさかのぼること3か月前、哲也の姿は彼の父親が経営する巨大リゾートホテルにあった。そこで行われていたのはテレビ東洋の人気恋愛リアリティ番組「ゲット・ザ・バチェラー」の収録。総資産3000億円・御曹司の哲也と結婚するため、7人の女性たちが熾烈な自己アピールを繰り広げるのだが、次第に彼女たちの裏の顔があぶりだされてーー。

 と書くと、なにやら一昔前の2時間サスペンスドラマのようで、つい画面に山村紅葉や松下由樹の姿を探してしまうわけだが、いやいや、これがかなりおもしろい。CMを含め30分という短さもいい。

 そのおもしろさの理由のひとつが、テレビ東京の“やってまえ精神”。撮影場所に向かう女性陣から「こういうのって普通、リムジン移動じゃないですか」の声が上がると、やさぐれ風味の女性ADはきっぱり返す「だって、テレ東っすから」。番組から脱落し、帰宅する参加者に渡されるのはLCC・ジェットスターのチケットだ。そもそも、恋愛リアリティ番組がコロナの影響もあり撮影できない今、それを逆手にとってドラマにしてしまうのがテレ東スピリッツである。

 番組に参加する7人の女性たちのプロフィール設定は、家事手伝い、女性社長、タレント、デパート店員、弁護士、看護士、財閥令嬢とわりとステレオタイプ。が、2話冒頭で脱落したのが女性社長・遠藤星役の真飛聖で、次に落とされそうなのが弁護士の須崎利子役・成海璃子という展開には驚いた。なぜなら、俳優の番手でいえば、もう少し後まで残りそうな2人だからだ。流石、テレビ東京。サスペンスドラマのセオリーをなぎ倒してくる。

 そんな本作で圧倒的な存在感と説得力をもって、鳴戸哲也を演じているのがテレビドラマ初主演となる古川雄大。

 これまでおもにミュージカルの世界で活躍してきた古川だが、2020年前期の朝ドラ『エール』(NHK総合)の“ミュージックティーチャー”役で、一躍広く知られる存在になった。独特の女性言葉を操りながら、華麗に舞う姿に多くの視聴者がザワついたのも記憶に新しい。

 本作『女の戦争』の哲也は夕日をバックに白いスーツを着こなし、涼やかにたたずむ資産3000億円を有する御曹司。参加者の女性たち全員に公平かつジェントルに接し、どんな時も自然な笑顔を絶やさない。こんな非現実的な“王子さま”を自然に演じられる俳優はそうそう見当たらない中、古川は完璧な王子感で作品の世界観を成立させている。

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