『おかえりモネ』第1部のラストは最終回のよう 百音の心と重なる主題歌「なないろ」の歌詞
朝ドラにおける「タイトルバックなし」は物語の重要な節目、そして『あさイチ』(NHK総合)の博多大吉が朝ドラ受けで触れていたように、最終回と見間違うような展開が待ち受けているサインである。
視点を変えれば、その1分ほどの時間も惜しいくらいに詰め込まれた脚本だということ。『おかえりモネ』(NHK総合)第1部「宮城編」ラスト。第9週「雨のち旅立ち」第45話で描かれたのは、未来に向かい自ら歩みを進める百音(清原果耶)の姿だ。インタビューの中で清原果耶は宮城編をこう振り返る。
「2つの土地で学び、吸収したものを携えて東京へと旅立つので、モネの基盤をつくったパートだと思います」(『NHKウイークリーステラ 2021年 7/23号』より)
サヤカ(夏木マリ)をはじめとした登米の森林組合の人々には「仁に過ぎれば弱くなる」を胸に社会人としての厳しさと優しさ、そして新たな出会いを。気仙沼では家族の温かさとあの日を境にそれぞれが抱える悲しみを知った。
サヤカに背中を押され、気仙沼に帰って来た百音は家族に島を離れた理由と「気象予報士になる」という決意を告げる。百音の「大切なものをなくして傷つく人はもう見たくない」という涙ながらの言葉に、未知(蒔田彩珠)は姉の背中を見つめ、耕治(内野聖陽)と龍己(藤竜也)は娘/孫の成長を感じ、亜哉子(鈴木京香)は雅代(竹下景子)の遺影を振り返る。またそれは大切なものを亡くした亮(永瀬廉)と新次(浅野忠信)への思いでもある。
朝岡(西島秀俊)は言った。「私たちが全力を尽くして提供するのは大切なものを守る時間です」と。未来が分かる気象で自然の猛威から危ない目に遭う、登米と気仙沼の大切な人たちを守ることができる。山の中で荒天に遭う百音を東京にいる朝岡が的確な指示で救ったように。たとえ東京にいたとしても、思いはそこに「いる」のだ。