『おかえりモネ』夏木マリ×坂口健太郎、“大人”の言葉が心に染みる 百音が感じたほろ苦さ

『おかえりモネ』百音が感じたほろ苦さ

「しゃくしゃくと生きている大人もジタバタしている。案外傷ついているし必死だ」

 サヤカが百音にかけた言葉だが、菅波に始まり大人だからってはっきりと自分の気持ちがわかり、その気持ち通りの行動ができるかと言ったら違う。もちろん、子供の頃は大人って “そういうもの”だと思っていた。しかし、たくさんの資格を所持し全てを余裕でやってのけそうなあの職人のおじさんたちも、結局その資格をそれだけ得るための努力をしてきた人たちで。そういった大人の現実、泥臭さに百音が垣間見たことは、これから試験勉強に限らず時には不条理さに向き合ってもやりがいの感じる仕事を目指す彼女にとって財産になるはずだ。その大人の一面を見ることで、大人になっていくものだから。

 大人の気持ちだって天気と同じで、変わる。田中のように移ろってしまったり、意地をはって自分の本当の気持ちを否定してしまったり、素直になれない者もいる。その同じ大人の菅波からの「毎日が変わるなら固定観念、意地に惑わされず、いつでも自分の思った気持ちに向き合えるように結論を先延ばしする選択をしないか」という言葉は、田中だけでなく多くの人の心に響く優しさがある。大人だからって決定を急かされてしまうことも多いが、本当は私たちも自分の気持ちを知るために迷う時間が欲しいだけの時もあるからだ。

 そんな、ちょっぴりビターテイストな第29話は、その菅波の言葉に心を動かされた田中が改めて百音にテーブルと椅子を作ってほしいと頼む。それは、単なる家具ではなく、彼がやはり諦めたくないという気持ちの象徴でもある。その真意を受けとった百音は、噛み締めるように「ありがとうございます」と伝えるのだった。

※塚本晋也の「塚」は旧字体が正式表記。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。湖畔でキャンプがしたい。InstagramTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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