『おかえりモネ』夏木マリ×坂口健太郎、“大人”の言葉が心に染みる 百音が感じたほろ苦さ

『おかえりモネ』百音が感じたほろ苦さ

 突然注文していたテーブルと椅子を断念しようとした田中(塚本晋也)。そのサイズから、自分1人用ではないことに気づいた百音(清原果耶)は再び彼の元へ訪れる。彼女の読み通り、それはステージ4の肺がんを患い余命いくばもない彼の最後の願い……出ていってしまった奥さんと娘とまた食卓を囲みたいというものだった。

 今週のタイトルでもある「大人の青春」について少し考えさせられる『おかえりモネ』(NHK総合)第29話。大人が当たり前にしている日常の仕事の中に潜む「資格」に始まり、百音の両親の馴れ初めなど、まだ社会人1年目の百音にとっては“知らない大人の世界”という隔たりを持ってそれが描かれてきた。

 しかし、その「大人の青春」の代償を払っているのが田中である。若気のいたりで浮気ばかりして、奥さんと娘に愛想をつかされ出ていかれてしまった彼。死期を悟り、それを受け入れる姿勢の彼は自分の病状が悪化したためテーブルと椅子をキャンセルしたのだった。

 その事実を知った百音は、菅波(坂口健太郎)に彼を助けてくれと頼む。百音のことを最初こそただ一瞥していた彼だったが、それから事あるごとに彼女に苦言を呈したり、指南したり、資格試験までの勉強を含め導いてきた彼は言わば百音にとってサヤカ(夏木マリ)たちとは少し違う、一番年齢も近い存在の「大人」である。菅波はいつだって冷静沈着で、むしろ愛想すらない。百音は時より菅波が何か言うと、「それ、菅波さんが口に出すと違和感……」みたいな反応をする。彼女にとって「大人って、こういうもの」みたいなイメージが一番投影されている人物ゆえの反応なのだ。

 だからこそ、患者自らの意思がない限り救えない歯痒さを感じて、自分の力では救いきれない命に対して苛立ちを隠しきれない菅波の姿に百音は驚く。「本心なんてあったようでないもの。人間の気持ちなんてそんなものです」。こう諦めた様子で心情を吐露する彼からは、気持ちばかりあっても仕方ない医者としての日々を過ごす中、合理的でいることによって自己防衛をしていることが窺える。

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