『着飾る恋には理由があって』晴れ晴れとした最終回に 真柴と駿が踏み出した“新しい一歩”
「あなたが、その理由!」
登場人物たちの晴れ晴れとした笑顔で締めくくられた『着飾る恋には理由があって』(TBS系)。現代の私たちにとって「生きる」とは、単に「衣食住」が確保されているだけではないのだろう。安心できる“居”場所に、自分を素敵に着“飾”る余裕、そして“充”実感のある毎日を送りたい。そのために、まずは顔を上げること。できることを一つずつクリアしていくこと。
ときには、逃げたくなったり、全てを捨てたくなったりするけれど、落ち着いて自分自身を見つめれば、きっとまた頑張りたい理由が見えてくる。そんな自分にも誰かにもときめきながら生きていきたいと願う私たちに「応援しています」「頑張って」と勇気づけてくれる、温かなラブストーリーだった。
友達以上、家族未満で
元夫の礼史(生瀬勝久)から「もう一度、夫婦をやり直したい」と言われた香子(夏川結衣)の返事は「今のままやっていこうと思う」だった。もしかしたら留学で人生をリセットできていたら、礼史の提案を受け入れられていたかもしれない。でも、残念なことに自分ではどうしようもできなかった事情で、留学は叶わぬ夢となってしまった。その「もしかしたら」を考え出したらきりがないのが人生なのだ。誰もが自分の思い通りにいかない日々を、どうにか修正しながらやっている。香子もまたそうやって50年を生きてきた。だからこそ、人生100年時代のこれから50年を「やり直し」よりも「可能性」を楽しみたいと望んだのだろう。
「私には、私がいるから平気」大人になれば1人でも十分幸せになれる方法を知っている。とはいえ、ちょっぴり寂しくなることも。だって、老いと孤独は仲良しだから。希望に溢れた若いカップルを見れば、2人だから叶えられる夢が眩しく見えることも。そんな香子に、礼史は「友達以上、家族未満で」と寄り添う。人生の折返しといっても、次の50年は先の50年に比べて無理がきかないことも。だから、このシェアハウスで作られた心地よい関係性のように「友達以上、家族未満」の距離感でお互いを支えていこうと乾杯する。夫婦を、家族をやめたからこそ、2人なりの間柄を作ることができるかもしれない。それもまた、香子にとって見つけていきたい新しい可能性だ。
“好き”と上手に付き合っていく
アーティストとしての夢を諦めるか迷っていた羽瀬(中村アン)に、プロポーズをした陽人(丸山隆平)。陽人が一緒にいたいと思ってくれるのはもちろん嬉しいけれど、陽人への責任感から絵を描き続ける未来は苦しすぎる。なりたい自分にどうやって近づけていくか、そのプロセスも含めて夢なのだから。しかし、いくら好きでも叶わない夢もある。どんなに望んでも手に入らない現実がある。羽瀬は思い切ってこれまでの作品を処分し、就職という新しい一歩を踏み出すことに。「なんだか、スッキリしてワクワクする」と吹っ切れた様子だったが、それでもいざ作品たちが回収されてしまうととっさに追いかけてしまう自分がいた。そんな自分自身でも知らなかった絵に対する想いを理解していたのが陽人だった。
「好きなもんは、しゃあないんやから。上手に付き合っていけばえぇと思うんよ」と陽人。そして「何より俺が羽瀬ちゃんの絵、好きやから」とも。羽瀬が絵を描くことが好きなように、陽人も絵を描く羽瀬のことがどうしようもなく好きなのだというまっすぐな思い。絵を描き続けるか、辞めるかの2択ではなく、“好き”とうまく付き合っていく未来もあること。陽人と一緒なら、絵を描くことも、絵を描き続ける自分自身のことも好きでいられる未来が広がっている。その絵が思い浮かんだ羽瀬は、すぐさま陽人にプロポーズ。その迷いが一つもない晴れやかな笑顔に、夢を持つ幸せが、叶えるだけではなく、追う日々そのものにあるのだと改めて気付かされる名シーンだった。