“ほしい言葉”を間違えてしまう横浜流星 『着飾る恋』で考える“寄り添う”ということ

『着飾る恋』で考える“寄り添う”ということ

 叶わなかった夢も、追えなかった夢も、自分の人生には必要だったと思える日が来る。いや、思えるようにしなければならないのだ、笑って生きていくために。

 火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系)第9話では、最終回を前にそれぞれの“これから”に向けて考えさせられる展開となった。

それが“逃げ”かは後に本人だけが知るもの

 真柴(川口春奈)は、SNSにアップした新作バッグに盗作疑惑が浮上。個人的に購入し、紹介したものにも関わらず、まるで片棒を担いでいるかのような目を向けられ、コメント欄は炎上状態に。自分の投稿がまた新たな火種になってしまうのではないかと、スマホを見ることもままならなくなってしまう。

 そんなときに舞い込んできたのが、駿(横浜流星)の北海道での新店オープン話。今の仕事の状況が辛いこともあり、一緒に北海道行きを考えた真柴だったが、駿は「逃げるな」「このまま一緒にいてもダメになる」と返す。それは駿が、かつて夢を投げ出すように店から逃げたことを後悔したから出た言葉だったのだろう。

 しかし、真柴にとって駿と共に北海道へと歩むのは果たして“逃げ”なのだろうか。もともと真柴が仕事を頑張っていた理由は、憧れの社長・葉山(向井理)の役に立ちたい、認められたいと願ってのこと。そして今は、その葉山も会社を離れ、葉山ではなく駿と一緒に歩むことを選んでいる。

 もちろん仕事を通じてやりがいを感じていたし、そこからバイヤーに挑戦してみたいという新たな夢も見つかった。けれど、真柴が頑張る理由に大きく恋が起因しているのは明らか。きっとこれまで頑張ってきたように新境地でも生き生きと過ごしていただろう。

 そもそも駿が料理人として生きていくという夢を追う理由は、真柴のそれとは大きく異なるのだ。それなのに真柴の未来と、自分の過去と重ねて「ダメになる」と頭ごなしに否定するのは、あまりにも早合点ではないだろうか。自分と同じ道を歩ませまいとするのは、彼女のためを思って言っているようだが、見方を変えれば「後悔する権利」を奪う傲慢な態度にもなりうる。

寄り添うとは相手が答えを導き出すのを“待つ”こと

 一方、恋人の岐路に言葉を間違えた男がもう1人。それはアーティストの卵・羽瀬(中村アン)と付き合った陽人(丸山隆平)だ。いつまでもフリーターとして夢を追い続けていいのかと不安になった羽瀬に、陽人は結婚して夢を支えていくとプロポーズをする。だが、羽瀬からは「ほしい言葉じゃない」と一蹴されてしまうのだった。

 傍から見れば、それは素敵な提案にも聞こえる。実際に、キュンとした視聴者もいるのではないか。でも、そうはならなかった。なぜなら陽人を想う気持ちと絵を描く理由は、別のところにあるものだから。カウンセラーとしては100点な陽人も、1人の男性として向き合うと、途端に羽瀬が何を求めているのかが見失ってしまう。それほど“公”に比べて、“私”が難しいということを気づかせてくれるシーンだった。

 プライベートと仕事をリンクして考える人もいれば、切り離して考えたい人もいる。同時に頑張ることができる人もいるし、ある時期はどちらかに重心を置かなければ難しい人も……。1人ひとりが違うスピード、違う尺度で、それぞれの夢と現実を見つめているのだ。

 そんな異なる価値観を持った相手と一緒に歩みたいのなら。そして、ときに大事な相手が寄りかかって弱音を吐きたい日がやってきたとしたら、きっと葉山のようにその涙を誰かに見せないように隠して、あふれる言葉を聞いてあげることが正解なのだろう。

 それは、“感情に共感を示すだけで正論をぶつけないほうがいい”というテクニック的なことではない。本当の意味で寄り添うというのは、相手が自分自身で答えを導き出すまで“待つ”ことなのだ。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる