『ナイト・ドクター』は第2の『コード・ブルー』に? 医療ドラマシリーズ化の条件を探る
今回の『ナイト・ドクター』のように“救命医療”を題材にした作品は、一見もっとも非日常的な医療分野に思える反面、ドラマとしては非日常と日常のちょうど中間にある作品が生まれやすい。江口洋介主演の『救命病棟24時』シリーズ(フジテレビ系)や、山下智久を筆頭にした人気俳が集結し映画化もされた『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』(フジテレビ系)シリーズがその代表例だ。現実世界でも救急医の平均年齢は比較的若いということもあり、緊迫した医療現場を見せるという非日常性と同時に、若いドクターたちの成長譚を描くことができるという“日常性”を得ることで作品としてのバランスを保つ。そして同時に、“時間の経過”をより長いスパンで捉えることを可能にし、シリーズ化への道が自ずと用意されることとなるのだ。
それを踏まえれば『ナイト・ドクター』はシリーズ化には打ってつけの題材といえることは間違いないだろう。とはいえまだ作品が始まっておらず、どんな作品になるのか見当がつかない以上はなんとも言い難くもある。もちろん人気も高評価も集めてもシリーズ化の道を選ばない作品ももちろん存在している。近年の作品では、前述した“ヒロイック”のスタイルに則った『ブラックペアン』(TBS系)などが代表的なところか。原作があり、描けるテーマ自体はたしかに存在しているが、原作から主人公格を変更していたことから、なかなか同じ座組みでの続編につなげることは難しいのだろう。
また高評価でいえば、「医療」というより「医学」寄りの作品であったが『アンナチュラル』(TBS系)もそうだ。各エピソードで不審死事案の真相を解明しながら、石原さとみ演じる主人公ミコトのバックグラウンドや、井浦新演じる同僚解剖医が執念で追い続けた事件という大きな謎が紐解かれていく。こうした近年の連続ドラマで多く取られがちな構成は、1クールを通して視聴者の興味を惹きつけるメリットがある反面で、続編を作るためには新たなフックを用意する必要ができてしまうというハンデが生じてしまう。
一方で『アンナチュラル』同様、“裏方”の仕事を描いた『ラジエーションハウス 〜放射線科の診断レポート〜』(フジテレビ系)は10月期の月9としてすでに製作が決定している。原作漫画があるため幾つものストーリーが用意されている点はもちろん、前期で主人公のヒロイックな特殊性を存分に出し、登場人物たちの群像に重きを置いてポップに展開していったことでほかの医療ドラマとの差異化に成功したのである。
これらをすべて勘案すれば、『ナイト・ドクター』が“第2の『コード・ブルー』”になり得るためには、メインの登場人物たちが“若手ドクター”であることを活かし、“時間の経過”に伴う成長を見越したストーリーを組み立てていくこと。そして5人の群像性をより高めていくことが必要となるはずだ。
少なくとも、昨年来から続く新型コロナウイルスの影響もあって、不測の事態に備えてドラマ撮影の期間が余裕を持ってとられるようになったことで、多くの連続ドラマのクオリティは格段に上がっていると見える。本作もまた、月9ブランドに相応しい作品になると期待しても差し支えないだろう。
■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■放送情報
『ナイト・ドクター』
フジテレビ系にて、6月21日(月)スタート 毎週月曜21:00~21:54放送
※初回30分拡大
出演者:波瑠、田中圭、岸優太(King & Prince)、岡崎紗絵、北村匠海、沢村一樹、一ノ瀬颯、野呂佳代、櫻井海音、梶原善、真矢ミキ、小野武彦、原菜乃華、宮世琉弥ほか
脚本:大北はるか
プロデュース:野田悠介
演出:関野宗紀、澤田鎌作
制作・著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ NightDoctor/
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