『コントが始まる』マクベスは敗者ではない 菅田将暉演じる春斗に重なる青春時代の終わり

『コントが始まる』のマクベスは敗者ではない

 終始やや間延びしたような会話劇が、解散まで残り1週間となったお笑いトリオ・マクベスに残された贅沢な時間を切り取る、『コントが始まる』(日本テレビ系)第9話。

 里穂子(有村架純)は転職活動の早々で就職先が決まり、潤平(仲野太賀)は奈津美(芳根京子)の父親への挨拶を控えている。瞬太(神木隆之介)はなんと、解散後はひとりで冒険に出るらしい。そのことに賛同するつむぎ(古川琴音)は、マネージャーとしての道を歩み出した。

 どうしても、春斗(菅田将暉)だけが取り残されているように見える。ただ、辛酸をなめながらも好きなことを10年間続けた後、解散を決めて立ち往生してしまう春斗の姿にこそ、誰しもに訪れる青春時代の終わりを重ねてみたくなる。これまで以上に、菅田将暉の多感な表情にスポットが当てられている回だ。

 一度はマルチ商法にハマり、数週間前まで実家で引きこもっていた春斗の兄・俊春(毎熊克哉)。前職での華やかな兄の姿を知っているだけに今の仕事に満足しているのか心配する春斗だったが、対して俊春は、社会復帰を助けてくれた唯一の友だちが「垂らしてくれた糸を、一生懸命登ることしか今は考えてない」「まわりを満足させる生き方ができたときに初めて、本当の意味で自分を満足させられるような気がしてる」と答える。「人生、休むのもあながち悪いもんじゃないぞ」と添えられた言葉も、今の春斗には刺さったかもしれない。

 潤平の意地のせいで勇馬(浅香航大)と春斗の間にできてしまったしこりは、潤平の取り計らいにより解消される。その潤平は奈津美の父親(でんでん)に挨拶しに行き、不穏な反応を見せられながらも最終的にはその真摯な思いを伝えることに成功する。怖さと優しさのギャップを見せるでんでん。このドラマのキャスティングへの力の入りように改めて驚かされる。

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