『コントが始まる』マクベスは敗者ではない 菅田将暉演じる春斗に重なる青春時代の終わり
春斗と瞬太は、恩師・真壁先生(鈴木浩介)にバーベキューへと誘われる。そこで出会うのは、春斗と潤平のコンビの名前が「マクベス」に決まった日に生まれた、真壁先生の息子・太一だった。ちょうど10歳ということになるだろうか。「夢って追いかけないほうがいいの?」と尋ねる太一に、春斗と瞬太はどう見えていたのだろう。
子どもならではの鋭利な問いに晒された春斗と瞬太は、しかしそれによって、自分たちの10年間が「負け」の2文字では回収されないことを話すきっかけを得たようだった。「解散するのは時間切れだから」「負けたってことが(イコール)失敗したってことじゃないと思う」「俺は勝ってるって思ってるけどね」。何度も言葉を変えて語られるそれらは、解散をネガティブに語りたくない彼らとこのドラマの意思を十分に伝える。
瞬太はまた、春斗とともに生きていくことを決めた、屋上で言葉を交わした日のことも思い出していた。「この人にもっともっと楽しんでもらいたいなって思うことに、命を燃やそうって思えて」。瞬太の思いは、俊春が発していた言葉にも重なる。その瞬太が満足気にマクベスと過ごした歳月を肯定するのであれば、その発端となった春斗の人生も肯定されるに違いない。「お前らと冒険できてよかったよ。一生の思い出ができたわ」――。そう春斗が言葉にできたのは、潤平や瞬太が過去のしこりを取り払い、10年の意味を提示してくれたからだろう。「歯医者がやってなかった」=「歯医者はいない」=「敗者はいない」との太一の言葉も、コントのオチにつながるたまらない演出だ。
ファミレスでの最後のネタ打ち合わせ。気づけば朝になっているが、帰るのが名残惜しい3人。福岡帰りの寝不足のライブもよかったけど、解散ライブに向けて今日はもう潔く帰ろう。笑いあり、涙あり、忘れられない思い出の結晶が降り積もる、大切な大切な時間は終わりを告げ……。「毎週、当店にお越しいただきまして、ありがとうございました。最後のライブ、本当に楽しみにしております。行ってらっしゃいませ」――。ここまで見届けた里穂子と視聴者の思いが重なり、やがて最終話が訪れる。
■原航平
ライター/編集。1995年、兵庫県生まれ。Real Sound、QuickJapan、bizSPA!、芸人雑誌、logirlなどの媒体で、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。Twitter/ブログ
■放送情報
『コントが始まる』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:菅田将暉、有村架純、仲野太賀、古川琴音、神木隆之介
脚本:金子茂樹
演出:猪股隆一、金井紘(storyboard)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:福井雄太、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
主題歌:あいみょん「愛を知るまでは」(unBORDE/Warner Music Japan)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/conpaji/
公式Twitter:@conpaji_ntv