『ドラゴン桜』志田彩良の繊細な佇まいが光る 安田顕ら日曜劇場常連俳優も続々登場
ふたたび来校した繁は、麻里を退学させて就職後は優秀な男と結婚させると話す。「女にとってそれが一番幸せなんです」。「女で高学歴なんて言ったら、生意気な上に人を見下すクズみたいな人間になる」。何の根拠もない偏見そのものの言動だが、現実にこういう考えを持つ男性はいる。桜木は繁の学歴コンプレックスを指摘し、プライドを守るために娘の自由を奪っていると糾弾。男尊女卑で家族に暴力を振るう最低の父親だが、繁をかばったのは麻里だった。
「こんなお父さんだけど、私にとっては世界でたった1人のお父さんだから」。麻里が見せる思い詰めたような表情には理由があった。苦労する父の背中を見てきた麻里は、自分が我慢すればいいと思ってきたのだった。麻里を救ったのは東大専科の仲間だった。「小杉麻里は東大に行くべきだ。なぜなら、彼女の集中力は素晴らしいものがある」。習いたての読解を駆使し、東大へ行く理由を論じる生徒たちの主張を耳にして、麻里の中で感情が堰を切ったようにあふれ出した。
友のために走る『走れメロス』は、親友セリヌンティウスの視点からは「友を信じて待つ」と要約できる。邪知暴虐な王の元で鎖につながれた親友の姿は、麻里が置かれた状況そのものだった。読解とは相手の言いたいことを理解することだ。麻里は繁の苦しみを理解していた。東大専科のメンバーは読解の技術を身に付けることによって、身近にいながらまったく知らなかった麻里の本心を本人に代わって言葉にしてみせた。
麻里を演じた志田は、言葉で表せない感情の蓄積を表情や仕草のわずかな変化から描き出してきたが、第6話にしてついに物語とリンクすることになった。2014年に女優デビューし、短編映画『サルビア』、『わたしのまち』で主演を務めてからは、自身のペースで出演を重ねてきた志田。『ゆるキャン△』(テレビ東京系)でのナチュラルな雰囲気も魅力的だが、本作では培ってきた演技力を存分に発揮している。
※高橋海人の「高」は「ハシゴダカ」が正式表記。
※鶴ヶ崎好昭の「崎」は「たつさき」が正式表記。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
日曜劇場『ドラゴン桜』
TBS系にて、毎週日曜21:00~放送
出演:阿部寛、長澤まさみ、高橋海人(King & Prince)、南沙良、平手友梨奈、加藤清史郎、鈴鹿央士、志田彩良、細田佳央太、西山潤、西垣匠、吉田美月喜、内村遥、山田キヌヲ、ケン(水玉れっぷう隊)、鶴ヶ崎好昭、駿河太郎、馬渕英里何、大幡しえり、深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.)、林遣都、佐野勇斗、早霧せいな、山崎銀之丞、木場勝己、江口のりこ、及川光博ほか
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(講談社刊)
プロデュース:飯田和孝、黎景怡
脚本:オークラ、李正美
演出:福澤克雄ほか
製作著作:TBS
(c)TBS