テラシマユウカ×今泉力哉、『街の上で』を語り合う “観客に身近な映画”がもたらす安心感

テラシマユウカ×今泉力哉監督が映画を語る

テラシマユウカ「今の自分も愛していいんだ」

テラシマ:主演の若葉竜也さんが『愛がなんだ』のときから気になっていて。今回、『街の上で』で主演をやると聞いてすごく楽しみにしていました。若葉さん演じる主人公は、無口なんだけどしゃべるときはしゃべるし、かと思えば受け身だったり、少し不思議なキャラクターに感じたんですが、主人公を描く上で意識していることはありますか?

今泉:一番王道の主人公は“何かを手に入れたい人”なんです。脚本の授業で「ドラマ=葛藤」という言葉があって。主人公は何かを手に入れたいけれど壁があって、その壁を乗り越えたらさらにもっと大きな壁がある……という構成のマナーがあるんです。でも、手にしたいものがない主人公で映画を作れないかと思って。普通の映画の上映時間なんて2時間程度しかない訳ですし、別に無理に人を成長させる必要もないじゃないですか? だから、どちらかというと俺の作品の主人公は受け身な人が多いですね。役者さんの芝居については、ワークショップのときにいつも言っていることなんですが、発信も大事だけど、“いかに受けられるか”が役者として重要だということ。『街の上で』に関しては、他の俳優さんは「若葉さんは受ける芝居が本当にうまいから、安心感があった」と言っていましたね。若葉さんは受け身がすごくできる役者なんですよ。

テラシマ:本作の主演に若葉さんを選んだきっかけはなんだったんですか?

今泉:もともとはオーディションも兼ねたワークショップを開催して、その中からキャスティングしようと思っていたんです。だけど、ちょうどそのときが『愛がなんだ』の公開時期で、上映後のトークゲストでお会いしたときの感じや、公開したときの観客の皆さんの反応を見ていて、若葉さんなら本当に無名な方や、一般の方と交ざっても大丈夫かもと思った。そこで、ダメ元でオファーしたという経緯ですね。結果ベストな配役だったと思います。4人の女優さんも今、それぞれのステージで活躍していますが、一緒にあのときにできてすごくよかったと思います。

テラシマ:女優さんの方々も全員が愛しく思えちゃうんですよね。穂志もえかさん演じる川瀬雪は、ちょっと振り回してくるところがあるじゃないですか(笑)。だけど、なんか憎めなくて。そういう人物の描き方もすごいなと思いました。

今泉:登場人物を魅力的に描く方法があるとしたら、少し語弊があるかもしれませんが、どこか幸せじゃない人を描くことかもしれない。うまくいっていなかったり、空回っていたり、浮き世離れした人を描いていると、それが観客の方々にとっては近しく思えたり、嫌味に映らなかったりするのかもしれないですね。

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テラシマ:たしかに。『愛がなんだ』を観たときも、自分が経験したことがないことでも、共感や理解ができました。今泉さんの作品って、「今の自分も愛していいんだ」と思える作品が多いように感じます。

今泉:俺はどちらかというと人のためより自分のために映画を作っているかもしれません。俺は本当にダメな人間ですが、それでも自分がやっていることは肯定したい。もちろん、時代とともに成長はしたいですが、一般的に「ダメなやつ」「変なやつ」とされる人の側にいつだっていたいし、そういう人こそ面白いと思いますね。

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