高橋海人演じる瀬戸の涙と新たな一歩 『ドラゴン桜』桜木にみる、本来の教育のあり方

『ドラゴン桜』高橋海人の涙の理由

 「世の中には勉強したくてもできない人もいる」。そんな言葉を聞かされたことはないだろうか? 親や教師に言われ、反発した経験を持つ人もいるに違いない。大学進学が普通になった現在ではピンと来なくても仕方ない。『ドラゴン桜』(TBS系)第4話では、家庭の事情で働かなくてはならない瀬戸輝(高橋海人)に桜木(阿部寛)が語りかける(以下、ネタバレを含む)。

 姉の玲(大幡しえり)を手伝って、実家のラーメン屋で働く瀬戸。ある日、店に大量の貼り紙が貼られる。別の日には柄の悪い2人組がクレームを入れにやって来る。両親が残した借金を返すため、玲はヤミ金に手を出していた。法外な金利で返済額が膨らむと、借金取りの嫌がらせが始まった。

 目標に向かって進む時、一緒に努力できる仲間は貴重だ。発足間もない東大専科の生徒たちは、夢を共有する仲間になりつつあった。ただ1人、瀬戸以外は……。姿を見せない輝を、楓(平手友梨奈)や天野(加藤清史郎)、菜緒(南沙良)は心配するが、桜木は自分がすべきことに集中しろと言う。2005年の前作にも登場した数学講師・柳鉄之介(品川徹)を招いて、徹底したスパルタ指導で小学2年生の算数からやり直させるのだった。

 『ドラゴン桜』の魅力は、劇中に登場する受験テクニックにその多くを負っている。科学的な根拠と合理主義に裏付けられた指導は、若干の誇張はあるものの、おおむね頷けるものばかりである。ユニークな方法論に加えて、その伝え方が秀逸だ。たとえば、水野(長澤まさみ)が渡した「バカ」鉢巻き。よく「悔しさをバネにしろ」と言われるが、具体的にどうすればいいかと聞かれると困ってしまう。その点、これはわかりやすい。桜木は「努力の原動力はネガティブ感情の方がパワーが強い」と理由を説明しつつ、「勉強とは怒りだ。できない自分にもっと怒れ」と発破をかける。スマホアプリを使った勉強法もその一つ。観念論、抽象論ではなく、具体的な手段と紐づいているから誰でもアクセスできる。このことからもわかるように、桜木は生徒を大人として対等に扱う一方で、決して勉強方法を丸投げしない。保護者に示した「東大合格必勝法・家庭の10か条」は象徴的だ。開かれたスタンスで責任を持って生徒を導く姿には、本来の教育のあり方を見る思いがする。

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