海外ドラマの次は“アジア作品”と“映画” U-NEXT 堤天心社長が語る、水面下の動きと新戦略
米ワーナーメディアとSVODにおける独占パートナーシップ契約締結を発表した、動画配信サービス「U-NEXT」を運営する株式会社U-NEXT。今回の独占パートナーシップ契約締結を機に、今後、HBOおよびHBO Maxオリジナルの新作がU-NEXTで鑑賞できるようになるということで、これまでHBO Max作品の国内での鑑賞を待ち望んでいたドラマファンからも歓喜の声が相次いだ。
発表同日には「U-NEXT戦略発表会」も行い、その存在感を強めているU-NEXTは、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Huluなど競合相手ひしめくSVOD市場をどのように見ているのか。代表取締役社長の堤天心氏に話を聞いた。
「ブランド価値を高めていくパワーが、ハリウッドやアメリカのドラマ」
ーー今回、なぜワーナーメディアをパートナーに選んだのでしょうか?
堤天心(以下、堤):我々は、海外ドラマというジャンルが、ほかのジャンルと比べると市場における存在感が弱いと感じていました。NetflixとHBOは、ドラマというカテゴリにおいて、アメリカでは双璧をなすブランドです。元々は「ハリウッドのトップクリエイターを招聘して、映画のような規模感とクオリティのドラマを作る」という方法論を先に確立していたのはHBOで、Netflixがその戦略を踏襲し、「クリエイティブとして最先端のものを生み出すブランド」という自社プロモーションも功を奏しました。逆に我々はそういった先進性、スケールの大きさに課題を感じていました。ワーナーメディアさんと組ませていただければ、我々に欠けていたものを補完していただけますし、ユーザーに対しても、最先端のアメリカのドラマを観たいとなったときに、Netflixと並ぶ選択肢になり得ると感じていました。
ーーSVODサービスに各社様々な特色がある中でも、U-NEXTはオールラウンドなジャンル展開をしている印象でした。
堤:これまでは映画、アニメ、アジア作品を重点的に強化していて、そのジャンルのファンの方々からは一定の評価をいただき、会員数を積み重ねてきました。しかし、実態として作品数は多いものの、海外ドラマが好きな方からはほとんど選択肢に入っていなかった。イメージも含めてアソシエーションがなかったためです。日本のアニメやドラマに比べるとマスなジャンルではないかもしれませんが、海外ドラマのようなクオリティが高いコンテンツに関心があるクラスターには、非常にインフルエンシャルな方々も多く、そういった方々の数や発信力がサービスのブランディングにも繋がっていると感じていました。
ーー単にユーザー数を獲得する以上の付加価値のようなものがあると。
堤:そうですね。サービスとしてのブランド価値を高めていくパワーが、ハリウッドやアメリカのドラマだというのは間違いないと思います。コストもクリエイターの才能も最高峰で、グローバルな市場をターゲットに作られている。日本にはないスケールとスピード感ですよね。Netflixは年間20〜30程度の財団と定期的に新作を出していますから、アーカイブもすごく豊富です。我々もそれに匹敵する質と量を整えていくために、一つずつピースを集めていこうと2年ほど前から動いていました。これまでもViacomCBSの米プレミアムチャンネル・SHOWTIMEとも独占契約を結んでいますし、それ以外にもネットワーク系の多くの作品を観ることができます。そして、そうしたアメリカドラマの最後の大きなピースがワーナーメディアさんということです。
ーー発表から1カ月経ちましたが、ユーザーからのリアクションはダイレクトに感じていますか?
堤:コンシューマーの方の反響、もしくは間接的なSNSでの盛り上がりにおいても非常に大きな手応えを感じています。業界内でもかなりインパクトのあるニュースになったのではないでしょうか。直接のお問い合わせや反響を取引先などからも多くいただきました。
ーー海外ドラマに限らず、今後のU-NEXTの展開は?
堤:品揃えに加えて、U-NEXTでしか観ることができないプレミアムな作品群をジャンルごとにラインナップしていきます。海外ドラマと並行して、もうひとつ主戦場と捉えているのがアジア作品です。アジアの良質かつU-NEXTでしか観られないコンテンツを揃えたい。近年はNetflixさんも韓国作品に注力していますが、「NetflixとU-NEXTさえチェックしておけばアジアコンテンツはOK」という市場の世論形成を目指しています。その点では、海外ドラマと同じですね。さらにもうひとつ主戦場となるのが映画です。この領域でも我々は品揃えに加えて、U-NEXTでしか観られない新作コンテンツなどを一定数取り揃えていく予定です。映画業界は、世界的にもコロナ禍により大きな動きが出ていますが、当社は映画のウインドウを維持しつつ、より多くの方にお届けしていきます。