海外ドラマの次は“アジア作品”と“映画” U-NEXT 堤天心社長が語る、水面下の動きと新戦略

U-NEXT社長が語る、競争勝ち抜く新戦略

「ようやく準備が整い、主戦場に出るという気概です」

ーーそんなデジタル化の波にU-NEXTはどう対応していくのでしょう?

堤:コンテンツの作り手の目線で考えると、リージョンごとにパートナーシップを結んで配給するという考え方か、コンテンツ制作も含めてグローバルOTTに身を預けるかという2択になっています。我々としてはコンテンツ制作に関しては今のところ積極的ではありませんが、前者においてはU-NEXTに任せてほしいと手をあげる準備はできています。今回のワーナーメディアさんとの契約も、ある種「日本というリージョンにおいては、U-NEXTに任せておけば間違いない」というBtoB向けのブランディング、セールスPRの意味も自然と含まれています。今後も努力を続ければ、海外の有力なコンテンツを日本向けに、安定して供給できると期待しています。

U-NEXTにて独占配信中の『タイガー・ウッズ / 光と影』(c)2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R)and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

ーーグローバルOTTがコンテンツ制作にも携わるという戦法については、韓国のNetflixオリジナルの盛況などが象徴的に思えます。

堤:そうですね。グローバルOTTが直接スタジオと制作した作品の中からもヒット作がでてきました。これまでのドラマ制作において必要不可欠だったテレビ局ではなく、OTTがスタジオ、あるいはクリエイターに直接オファーするようにもなっています。この傾向は世界各国で起こっている新たな潮流で、より加速していくでしょう。

ーー一方、日本ではいかがでしょう。それほどドラスティックな動きはないようにも思います。

堤:まさにNetflixさんはアニメにおいてスタジオと直接契約し、作品を発表しています。ライブアクションについてはそれほど顕著な例はまだありませんが、世界のエンタメ産業がOTTサービスの台頭で大きな転換期を迎えていることは事実です。アメリカでは、新型コロナウイルスによって映画ウインドウにも大きな変化が現れています。日本のエンタメ産業においても、この1、2年で劇的な変化がやってきてもおかしくないとは思います。

ーー立ち上げ当初からテレビ局のようなコンテンツホルダーと資本関係を持たず、SVODサービスとしてのブランドを確立してきた会社はそう多くはないと思います。堤さんご自身ではここまでU-NEXTが成長できた理由はどこにあると考えますか?

堤:個人的にはすごくシンプルだと思っています。品揃え戦略をとったサービスが他にいなかった。自社コンテンツやヒット作、大作をいかにホールドするかを重視するケースがほとんどでした。大作以外のいわゆるインディペンデントな作品であったり、マニアックなコンテンツもフラットに取り揃える戦略をとったのが当社だけだったということです。

ーーなるほど。

堤:もうひとつ種明かしをすると、量を増やすという“品揃え戦略”は、徹底したデジタルマーケティングと表裏の関係です。通販サービスとしてのAmazonは、その思想で現在のポジションにまで来ていますし、ECサイト業界の方であれば基本な考え方です。配信サービスにおいて、デジタルマーケティングを突き詰めるローカル企業が僕ら以外にはいなかったことも要因です。

ーーその戦略は、容易に進められたものなんですか?

堤:デジタルサービスはテールマーケティングとの相性が非常にいいので、品揃えを強化する、という時点で必然性を伴っていました。他社さんのように大作で一気に加入者を増やさなくても、5人が見たいと思う作品が数万タイトルあれば、同様のインパクトを作り出すことができます。デジタルの世界だからこそ、コアな作品まで幅広くラインナップし、それを欲している方とのマッピングが容易です。オペレーション負荷は高いものの、これまではこうした地道な取り組みで会員数を増やしてきました。一方で、品揃えは多いもののサービスを象徴するようなブランドやインフルエンシャルなトリガーが積み上がらないという課題がありました。HBO作品群を筆頭に、「U-NEXTでしか見られない作品」が揃いつつある今、ようやく準備が整い、主戦場に出るという気概です。

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