『桜の塔』『MIU404』『ドクター・デスの遺産』 岡田健史が扮する3人の刑事を分析

『桜の塔』『MIU404』『ドクター・デスの遺産』 岡田健史が扮する3人の刑事を分析

 『桜の塔』(テレビ朝日系)で、若手刑事・富樫遊馬役を演じている岡田健史だが、昨年の『MIU404』(TBS系)、映画『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』(以後、『ドクター・デスの遺産』)とこの短期間で、刑事役を演じるのは実に3回目となる。これには岡田自身もコメントで「まったく新しい役に挑むよりも難しいと思います」と語っているほどだ(参照:岡田健史、『桜の塔』で3度目の刑事役に 「まったく新しい役に挑むよりも難しい」)。

 何と言っても『MIU404』での“きゅうちゃん”こと九重世人役は、作品自体のインパクトとともに強く視聴者の記憶に刻み込まれている中で、同じく若手刑事役を演じることになるのだから、これはかなりのプレッシャーだろう。『MIU404』では警察庁採用のキャリア組、父親が警察庁刑事局長という“選ばれし者”、一方、本作での富樫も警察大学校でトップの成績を誇るキャリア組という点は似通っているものの、前者は父親の計らいで、後者は自分で希望して“通常ルート”ではない現場に配属されている。

 前者では、最初はどこかクールで、頭でっかち、犯罪に加担してしまう人のことを「自己責任」の一言で片付け断罪できてしまうような若さゆえの、経験値のなさゆえの残酷さも持ち合わせる“正しさ”の暴力を振りかざしかねない“きゅうちゃん”の成長物語も見どころの一つだった。4機捜のメンバーや、コンビを組んだ年配刑事・陣馬(橋本じゅん)との触れ合いで、人には様々な事情があり、道を踏み外してしまうことは決して自分とは無縁の遠いことではなく、ちょっとした選択のズレが重なってのことだと気づき、自身の生まれながらに恵まれた環境を少し嫌悪するような一幕まで見せるようになった。

『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』(c)2020「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」製作委員会

 『桜の塔』では第1話時点で早くも先輩刑事にひたむきに食らいつくような姿が見られるが、その点では映画『ドクター・デスの遺産』での沢田圭役との共通点も見られる気がする。理想論に燃える真っ直ぐでエネルギッシュな役どころは、“安楽死”という是非が分かれる題材が扱われ息もつかせぬ展開が目白押しの中、観客にとっても心の拠り所・指標になるような“ブレなさ”があった。

 これだけ刑事役がひっきりなしに続くのも、やはり岡田自身が持つ硬派な雰囲気と少しの懐かしさ、そして清涼感ゆえだろう。ただ、同じ制服に身を包み、そして「国民の安心安全を守る」「正義」という共通目標を掲げ任務にあたる刑事役ともなれば、あまり言動にバリエーションも持たせられず、そこでの演じ分けが難しいことは想像に易しい。いずれの役どころでも、“刑事”というのは裁き切れない悪の存在や、そもそも杓子定規に語ることのできない“善悪の判断”を前に、苦悩し、自身の至らなさ、不甲斐なさに打ちのめされ、それでも前進しようとする姿が描かれるものだが、実直な雰囲気を持ち合わせ、それでいて勘の鋭い役が多い岡田だからか、全てを言い切らず飲み込み自問自答する姿がとても絵になり、引き込まれてしまう。実直で硬派ながら、単に溌剌としているだけではないというのが岡田独自のポジションのような気がする。

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