ファイナルシーズン目前の『ウォーキング・デッド』 追加エピソードとは何だったのか
18話の「俺を見つけてくれ」も、単にダリルのランデブーを描いただけではない。ファイナルシーズンを迎えるに当たって、製作側がファンに出さなければいけなかった答えの一つがダリルとキャロルの関係性だった。彼らのリレーションシップは、これまでの『ウォーキング・デッド』の中でも主軸要素となっていたため、追加エピソードでは2話分を当てて2人に迫っている。長きに渡って、友情とも恋愛感情とも、どっちつかずの想いを互いに抱えた二人が「本当のところ、どうなの?」という問いに対し、最終シーズンで一種の答えを出すための前準備のようなものに感じる。
そしてマギーとニーガンの因縁にも決着をつけなければいけない時が差し迫っている。二人は一度、シーズン9の第5話で対峙していた。牢屋の中で憔悴しきったニーガンは、自分を殺しにきたマギーを挑発したと思いきや、その場に泣き崩れ「殺してくれ」と懇願。彼女が死にたい理由を聞いた時、彼は「“亡くなった妻”の元へ行けるから」と答えた。そう、シーズン10のファイナルで描かれたニーガンとルシールの過去は、マギーとの再会した彼が再び立ち返らなければいけないものであり、本当の決着をつけるために描かれる必要があったのだ。
シーズン10ではウィスパラーズ討伐に一役も二役も買ったニーガンが、コミュニティのなかで信頼を取り戻していく様子が描かれていたが、グレンを殺した事実からは逃れられない。それを一番わかっているのは、殺した本人なのである。22話は、そんなニーガンがシーズン8の最終話でリックと戦った丘に足を運び、その場に埋まったままのルシールを見つけるも、“救世主のニーガン”の象徴であるそれを手放すことで彼自身が過去と決別する重要な瞬間が描かれた。なお、本エピソードが追加エピソードの中で最も話題となり、(ルシールを演じたのがニーガン役ジェフリー・ディーン・モーガンのリアル妻というのもある)その反響から番組側はさらなるニーガンのスピンオフ企画の可能性を考えていると報じられた。
ドラマはシーズン11(全24話)をもって終了する。しかし、ダリルとキャロルが主人公のスピンオフの製作もすでに決定している。シーズン11以降か以前の話なのかは不明だが、もしかしたらここで二人の関係性がさらに深堀りされるのかもしれない。しかし、スピンオフでも描くのであればなおさら追加エピソードでフォーカスされた理由が気になる。やはり、シーズン11においてこの二人の関係が物語に大きく関わってくるのではないだろうか。
そして、何よりも退場したリックが主役の映画版『ウォーキング・デッド』もお忘れなく。全3部作の予定で、2018年に製作発表されてから長期にわたって企画が練られてきた。1作目の撮影が2021年春を予定されているが、パンデミックの影響で後ろ倒しになる可能性もある。他にも『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』や2020年より配信開始となった『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』といった既存のスピンオフも並行しているため、ファイナルシーズン間近といっても、我々はまだまだ『ウォーキング・デッド』ユニバースを堪能できそうだ。
■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。三度の飯よりニーガンが大好き。Instagram/Twitter
■配信情報
『ウォーキング・デッド』シーズン10
Huluにて全話配信中
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