山崎育三郎が見せる2つの笑顔 『殴り愛、炎』に浮かび上がる“異様さ”
2週連続スペシャルドラマ『殴り愛、炎』の後編が4月9日にテレビ朝日系で放送される。
脚本は、このタイトル名からもお分かりの通り『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)や『奪い愛、夏』(AbemaTV)、『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日×ABEMA)などを担当してきた“ドロキュン劇場”の名手・鈴木おさむが手がける。
前編放送直後から、主人公の光男(山崎育三郎)の狂気ぶり、クレイジーさにSNSでも話題騒然だ。それもそのはず、『奪い愛、冬』で“怪演女優”の名をほしいままにした水野美紀の最恐シーン「ここにいるよぉ〜〜〜」の男性版パロディーが見られた。
しかも、本作では光男の趣味であるバードウォッチングに絡めて望遠鏡で覗きながらの例のセリフ、かつ婚約者・秀実(瀧本美織)と信彦(市原隼人)のキスの回数をカウンターで数えるという新しい趣向が凝らされ、その“異様さ”がより際立っていた。
神の手を持つスーパードクター、それでいて患者からも慕われる光男の笑顔が、信彦に向けられると“不気味に張り付いた能面的な笑顔”と一気に様変わりするのがお見事だ。
そもそも、スーパードクターの紹介シーンでは何度も『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)シリーズのパロディーが盛り込まれたり、何よりミュージカル界のプリンス・育様にCharaの名曲「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」を口ずさませるのも、憎い演出で気味悪さを助長させつつ笑いもしっかり誘う。
また、後編の何よりの見どころは、前編で秀実が見つけた過去のカルテに何が書かれていたのか? というところだろう。真相を知りたがる秀実に、光男の父で明田総合病院の院長の恒夫(西岡德馬)は「光男は何も知らないから」と口止めしていた。おそらく、そのカルテには光男の“スーパードクター”としての名声を揺るがす事実が隠されているのだろう。光男の異母兄弟の倫太(永井大)が父親に対して「俺のおかげで光男はスーパードクターになれたんだから」というようなことを言い、何かにつけ金銭を要求していることからも、もしかすると光男の医療事故などの不祥事をどうにか揉み消した、あるいは実は倫太が代打で手術して事なきを得たなどの事情がありそうだ。
倫太が「人間の記憶を安全に除去できる方法を本格的に学び出した。光男で試してみるか?」と冗談めかして言っていたが、これがどうやら冗談ではなさそうだ。