ライアン・レイノルズも呆れ気味? 『フリー・ガイ』『ブラック・ウィドウ』らが再び公開延期

ディズニー作品が再び公開延期

 コロナ禍でもっともかわいそうな目に遭っている映画は他でもない、マーベルの『ブラック・ウィドウ』だ。本来なら2020年5月1日に日米同時公開だったものの、コロナの影響で同年11月に公開が延期。しかし、パンデミックの状況が好転せずに再び2021年4月29日に延期された。その間、すでにマーベルは初のドラマシリーズ『ワンダヴィジョン』と『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』をディズニープラスで配信し、成功を収めている。もともと『ブラック・ウィドウ』がフェーズ4の始まりを告げる作品だったのに!

『ブラック・ウィドウ』(c)Marvel Studios 2020

 そして、3月24日にはついに“3度目”の公開延期が決定。全米公開日が7月9日に延期となった。それだけでなく、劇場公開と同時に課金制のプレミアアクセスでディズニープラスにて配信されるとのこと。マーベルはディズニーにとって言わずもがなもっとも大きな収入が見込めるシリーズだが、その判断が吉と出るのか凶と出るのか。

 この決断の背景には『ラーヤと龍の王国』のボックスオフィスの成績が振るわなかったという事実がある。1週間前に劇場公開した『トムとジェリー』がコロナ禍でありながらオープニング成績としては好調の1410万ドルを記録(参照:Warner Bros’ ‘Tom & Jerry’ Opening Higher In Monday Actuals; Still Second-Best Debut During Pandemic – Update|DEADLINE)。しかし『ラーヤと龍の王国』は2045館で公開されたのにも関わらず、初週は860万ドルのみ。『トムとジェリー』どころか2020年11月に公開したユニバーサル作品『The Croods: A New Age(原題)』の初週970万ドルさえも下回っている(参照:Disney's Raya And The Last Dragon Surprisingly Underperformed At The Box Office|CINEMABLEND)。

『ラーヤと龍の王国』(c)2021 Disney. All Rights Reserved. (c)2021 Disney and its related entities

 この興収の大きな要因として挙げられるのが、アメリカ国内の映画館の多くが営業再開したばかりで、その最初の作品だったこと。そして国内で3番目に大きなシアターチェーンCinemarkとHarkins Theaterがストリーミングとの同時公開に合意せず、作品の上映を見送った背景がある。しかも『トムとジェリー』も『ラーヤと龍の王国』と同じくワーナーが劇場と配信(HBO Max)で同時公開だったのに、ここまで差がついていることも興味深い。

 そんなガッカリ成績をとってもなお、『ブラック・ウィドウ』を延期させ同じ方法で公開することに踏み切ったのは、1年の中でもっともチケットの売り上げが見込める夏に公開することでサマーブロックバスターとして劇場での興行収入をあげようという考えだろう。これまで『ムーラン』や『ラーヤと龍の王国』がプレミアアクセスで配信されたが、ディズニーはこれまでディズニープラスでのプレミアアクセス分のデータを公表していない。なので、何とも言えないが正直、一世帯あたり約30ドルの追加料金と、家族みんなで劇場に行ったときのチケット代では利益に大きな差があることは明白だ。

 例に漏れず、ディズニーの手がけるほか作品も軒並み延期となっている。ライアン・レイノルズ主演の『フリー・ガイ』も、『ブラック・ウィドウ』と同じく3度目の延期となり、全米公開日が8月13日に再決定。これを受けて、レイノルズ本人が以下の動画をTwitterに投稿。

 「やあ、みんな! 良いニュースを知らせよう(テンション低め)。『フリー・ガイ』の新しい公開日をアナウンスするよ。(小声で:「どういうことだよ……」)。これまで何回か公開日が延期してきたけれど、今回は100%確定の日程だ。こんなに確証を持ったことはこれまでの人生で一度もないよ。新しい公開日を発表できて、とてもワクワクしている。さあ、その日程とは!(振り返って)8月13日だ。8月13日に劇場で会おう。今回はうまくいくと思っているよ。そうじゃなければ……ねえ…」

 時々、カンペを読まされている風の気まずさ、自分自身少し呆れた素振りを見せるレイノルズ。彼の皮肉たっぷりの告知動画は、ある意味作品公開を待ちわびていたファンたちを喜ばせるものになったと言える。

 そのほか、エマ・ストーン主演の『クルエラ』も劇場公開と同時にディズニープラスでプレミアアクセス配信が決定。『キングスマン:ファースト・エージェント』の全米公開日が8月20日から12月22日に、『ナイル殺人事件』の全米公開日が9月17日から2022年2月11日に延期された。

 ちなみにレイノルズは『フリー・ガイ』を大変気に入っていて、自分がこれまで出演した作品の中で一番好きだと公言している(参照:Free Guy Is Ryan Reynolds’ Favorite Movie He’s Ever Done(Not Deadpool)|SCREENRANT)。あの『デッドプール』を差し置いて、だ。そのため、これ以上『フリー・ガイ』が延期することはないと考えたい。そうじゃないと“心優しいカナダ人”のレイノルズでさえ、そろそろファン以上にブチギレてしまうだろう。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■公開情報
『フリー・ガイ』
2021年劇場公開予定
監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、ジョー・キーリー、タイカ・ワイティティほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
公式サイト:movies.co.jp/FreeGuy

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