小芝風花が表現する主人公の心の機微 『モコミ』萌子美に訪れた変化が最終回へのカギに

『モコミ』小芝風花が表現する心の機微

 「自分がどこにいるのかわかんなくなっちゃった。私が私じゃないみたいで」ーー花やモノ、相棒でぬいぐるみのトミーの声さえ全く聞こえなくなった萌子美(小芝風花)が、その突然の変化に翻弄される様子が描かれた土曜ナイトドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)第8話。

 「部屋がしんとして」という萌子美の言葉通り、我々にとっても見慣れたはずの萌子美の部屋から心なしか温かみが消え、ガランとして見えてくるから本当に不思議だ。これまでそれぞれのモノが気持ち良さそうに萌子美の手によって同じ空間内で生き生きと共存していたかに見えたのが、突然ただただ“そこにあるだけ”のモノに成り下がってしまったかのようだ。萌子美本人からすれば、“居心地の良かった場所”から“全く勝手知らぬ場所”に身を置いているような感覚に襲われさぞかし心細いことだろう。そんな彼女の繊細な心の移ろいや機微を引き続き小芝風花がとてもとても細やかに見せてくれる。萌子美にモノの声が聞こえていた頃にも、効果音などもなくモノの声が視聴者に届くことはなかった。それで言うと、今と何ら変わらないはずなのに、我々にも萌子美が体感している「静寂」が伝わってくるのだからお見事である。まさに、花屋の店員の涼音(水沢エレナ)がこぼす「何となく変わったようにも見えるし、変わってない気もするし」くらいの僅差を体現し、時に滲ませる“何かを諦めた”かのような表情が切なく迫る。

 この変化を家族に打ち明けたところ、母親の千華子(富田靖子)は「それが普通なのよ」とむしろどこか嬉しそうで、一方兄の俊祐(工藤阿須加)は“自分がきつい言葉をぶつけてしまい萌子美を深く傷つけてしまったからではないか”と責任を感じる。

 そんな中、家族を驚かせたのは父・伸寛(田辺誠一)の「田舎生活がしたい」という唐突な申し出だった。“突然何を言い出すの?”ときちんと取り合おうとしない千華子に、「自分が一体何したかったんだろうって思い返したときに、思い出したんだ。“元の自分”に戻りたいんだ」と心の内を伝える。祖父の須田観(橋爪功)の「戻れ戻れ! 本当の自分を思い出せ!」と言う加勢は、何も伸寛だけに向けられた言葉ではないだろう。清水家の人間みんなに言えることであり、また我々視聴者の胸をも打つエールにも聞こえた。

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