伏黒恵の精神的成長と領域展開 『呪術廻戦』第23話で描かれた“思考の解放”

『呪術廻戦』伏黒恵の精神的成長と領域展開

 自己犠牲をすれば、必ず誰かを救えるというわけではない。我々も日常的に良かれと思って、そして自分の価値を見誤って選択する行為かもしれないが、それが癖になると自分自身の精神的成長に繋がらないどころかマイナスになってしまう。そうではなく、自分を信じること。自分には価値があり、想像をすればありとあらゆることを実現できると信じること。そうすれば、自己を使い捨てるような事をしなくても誰かを救える。そう気づいたからこそ、奥の手を中断して繰り出した伏黒の領域展開「嵌合暗翳庭」は、不完全でありながらも、これまで見てきた術師のそれよりもクリエイティブなものだった。

 蝦蟇や鵺を複数繰り広げたり、自分自身を影として囮にしたり。それは「式神は1体でなきゃいけないことはない」、「影を操るなら、それで式神以外の物も想像していいのでは」という、普段自分で制御していた思考の解放。まさに“Think Outside The Box(枠に囚われない考え方をする)”であり、元よりあった自分自身の疑い方をプラスのものに変換することができたのだ。この伏黒の成長には、我々も学べるところがたくさんあるだろう。あの伏黒だいすきな宿儺も、「それでいい」と大変ご満悦だった。

 結果、特級を倒すことができた彼は、宿儺の指を取り込んだ呪霊の「共振」が今回の事件の真相だったことを知る。一方、虎杖と釘崎は相変わらず地塗と壊相と対峙。今週は伏黒回だったが、来週はこの2人の成長が見られる回になっているだろう。アニメも終盤。高専時代の五条悟も登場したことで(今週は回想シーンだけの登場なのに異常な存在感を発揮し、「じゅじゅさんぽ」でもそのご尊顔をふるまった)、彼の“過去編”に突入する日もいずれ来るのかもしれない。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。はやく脹相みたいInstagramTwitter

■放送・配信情報
『呪術廻戦』
MBS/TBS系にて、毎週金曜深夜1:25~放送中
Amazon Prime Video、dTV、Netflix、Paravi、U-NEXTほかにて配信中
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本唯
美術監督:金廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希、木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:堤博明、照井順政、桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
制作:MAPPA
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp/#index

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