新劇場版は映像表現における壮大な実験場だった 『シン・エヴァ』冒頭12分に見たその真髄

『エヴァ』映像表現における壮大な実験場

 庵野秀明が総監督を務める映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(以下、『シン・エヴァ』)が公開された。

 本作は庵野秀明が1995年~1996年に監督を務めたロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)の、リビルドとして始まった劇場アニメ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』(以下、『ヱヴァ』)の最終作だ。

 物語冒頭は、パリで先行上映された12分10秒10コマのもので、Amazonプライム・ビデオで公開されていることもあり、すでに何度も観たものだ。しかし、劇中に登場するある場面を観た瞬間、思わず泣きそうになってしまった。

 以下、ネタバレあり。

 前回の戦いで大破したエヴァ弐号機のパーツを回収するため、パリに降り立った赤木リツコたちヴィレのメンバー。

 街を復活させるため、ユーロネルフ第一号封印柱の復旧作業をおこなう伊吹マヤたちだったが、そこに不気味なエヴァ軍団が襲来する。

 パリ編は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』のクライマックスで描かれたヤシマ作戦のセルフリメイクと言える展開で、群体化された航空特化型のエヴァ44Aや、2つの下半身が繋がって動く電力供給特化型のエヴァ44Bの生物とも機械とも言えない造形はグロテスクで、群れを成して襲ってくる姿には禍々しい迫力がある。

 あの群体で襲ってくるエヴァは、『エヴァ』の影響で作られた“エヴァっぽいアニメ”に対する批評であり、無益な戦いを繰り返した末にボロボロに疲弊した「この世界の貧しさ」そのものの象徴なのだろう。

 その意味でも、悪意のある造形だが、同時に妙な愛嬌を感じるのが不思議である。在庫一掃セールとばかりに、新しいエヴァや戦艦が続々と登場する『シン・エヴァ』だが、最終的に一番魅力的だったのは“彼ら”だったと感じる。

 陽電子砲で攻撃してくるエヴァ4444Cに対し、リツコたちは、空中戦艦AAAヴンダーに吊るされた無数の戦艦を盾に防御。一方、エヴァパイロットの真希波・マリ・イラストリアスは、前回の戦いでダメージを負ったエヴァ8号機に乗って応戦する。

 空中戦闘用に改造された8号機の姿は工事現場の土木機器のようで、グルグルと機体を回転させながら宙を舞い、エヴァ44Aを撃墜していく。

 こういった派手なアクションとタイムサスペンスによって山場を作る見せ方は『シン・ゴジラ』でも展開された庵野監督がもっとも得意とする作劇手法だ。

 この見せ方は特撮映画由来のものなのだろう。それは盾となる艦隊とエヴァ8号機に釣り糸のようなものがチラチラと見えていることからもわかる。

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