『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は丸くなった作品!? 劇中における暖かく優しい大人たち

 新型コロナウイルス騒動によって幾度かの公開延期を迫られていた映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(以下、『シン・エヴァ』)が、ようやく2021年3月に全国ロードショーの運びとなった。新型コロナ感染拡大防止のために出された緊急事態宣言が、解除直後と予測される3月7日に映画を公開するとアナウンスが出たものの、解除直前になって期限を2週間延長すると政府発表があった。つまり平日の月曜日に封切りで、なおかつ1都3県は緊急事態宣言下だったにもかかわらず、公開初日だけで観客動員数は54万人弱、興行収入は8億を超える好スタートとなった。それだけ『シン・エヴァ』の公開を待ちわびていた人が多かったという証明だろう。

 テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、「テレビシリーズ」)(1995年)を新たな設定とストーリーでリビルド(再構築)する完全新作映画として、これまで『ヱヴァンゲリヲン劇場版:序』(2007年)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009年)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012年)の3作が公開された。次回作までの上映スパンは平均的に2~3年だったが、4作目にあたる『シン・エヴァ』は前作から9年も経っている。

 庵野秀明監督は2016年に公開された実写映画『シン・ゴジラ』の総監督を務めているが、『シン・ゴジラ』完成報告会見の場で『シン・エヴァ』の製作が遅れていることを詫びた。「新劇場版3本連続で魂を削りまくってしまった」と話し、「『新劇場版:Q』で完全燃焼してしまい、もう作品が作れないかもというところまで追いつめられてしまった」と心境を語っていた。かくして『シン・エヴァ』は2017年から本格的に打ち合わせが始まる。完成した映画は2020年6月に公開を予定していたものの、新型コロナウイルスの影響で2021年1月、さらに3月へと再三の公開延期が発表された。

 『シン・エヴァ』公開日はネタバレを恐れて、しばらくネットから遠ざかると宣言する人が多く見受けられ、鑑賞組の誰もが映画の詳細な感想を控えていた。だが核心に触れない程度の感想として、庵野監督が丸くなったという意見が散見された。テレビシリーズの流れを汲んだ完結編映画……現在では新劇場版との区別で旧劇場版と呼ばれる『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997年)は、おびただしい死のイメージに覆われ、物語は破滅的な方向へと進む。ところが新劇場版の完結編『シン・エヴァ』は、傷ついた心の再生と前向きな希望が描かれるのだ。

※編集部注:以降『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の具体的な内容に触れています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる