そしてみんなプロレスを始めた 親の介護を家族総出演のイベントとして描く『俺の家の話』

そしてみんなプロレスを始めた 親の介護を家族総出演のイベントとして描く『俺の家の話』

 そこで、さくらは『俺の家の話』ならぬ「私の家の話」という生い立ちを語り始めた。これまで家族が親の介護をしないことに憤ってきたさくらは、やはり毒親育ちで肉親の愛に恵まれない境遇だったのだ。その過去は能仕立ててで語られ、江口のりこがさくらの母親役、幼いさくらには秀生役の羽村仁成(ジャニーズJr.)が扮した。この劇中劇を主要キャストが演じるという趣向は、宮藤官九郎×長瀬智也コンビの『タイガー&ドラゴン』(TBS系)の落語パートでもおなじみだ。

 その寸劇的な能の中で気になったのは、さくらには家出した実兄がいるということ。「盗んだバイクで出ていった」という兄を大州役の道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)が演じ、「ぶろ~お~」というバイクの効果音を口で言っていたのには笑った。しかし、わざわざその存在を明かしたからには、今後、さくらの兄の実物も登場することがあるのだろうか。または、その人物は既に登場済みの誰かという可能性も?

 寿一は下半身や認知の衰えが改善し、娘・舞(江口のりこ)が買ってくれたシルバーカー(手押し車)で散歩できるまでに。しかし、さくらのことは婚約者だと勘違いしたままなのかと思いきや、2人きりになると、急によそよそしくなり、さくらに「子供たちの前では今までどおり恋人でいてくださいね」と頼む。第2話ではフラれたことを10分で忘れたということになっていたが、いつ、真実を思い出したのだろうか。そして、寿三郎が子供たちには絶対に言えない「死に方がね、分からないんです」という弱音を吐く姿は、老いのせつなさを感じさせる名演技だった。

 つまり、ファイトマネーをもらって寿三郎の婚約者を演じるさくらも、それに気づかないふりをする寿三郎も、寿一ら子供たちも、みんなが本当のことを言わずに芝居をしている。「介護はイベントだと思ったほうがいい」というセリフもあり、親が余生を終えるまでの時間をイベントとして、またはひとつの舞台、ひとつの試合として、家族全員がそれぞれの役どころを演じながら乗り越えていくのかもしれない。もちろん、実際に毎日行う介護作業はそんなに簡単でも楽しいものでもないのだが、それが辛くなったときに救いとなる考え方とは言えるかもしれない。

 2月12日放送の第4話では、寿三郎のエンディングノートに「寿限無のおとしまえ」という書き込みがあり、小学1年生の頃から観山家に弟子入りし芸養子として同居する寿限無に焦点が当たるようだ。第2話のレビュー(参考:『俺の家の話』は現代版『カラマーゾフの兄弟』? 長男・寿一の幸せはどこにあるのか)で本作と『カラマーゾフの兄弟』の人物設定が似ているところを挙げたが、もし、寿限無が『カラマーゾフの兄弟』における使用人スメルジャコフのポジションなら、とんでもない秘密が明かされる可能性も。寿三郎の子供たちが集まるときは「私は血縁ではありませんから」と遠慮がちで、自分を主張せず、常に幼なじみの寿一を立ててきたエンジェルのような寿限無。きっと、ただの出前配達員では終わらないだろう。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
金曜ドラマ『俺の家の話』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:長瀬智也、戸田恵梨香、永山絢斗、江口のりこ、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、羽村仁成(ジャニーズJr.)、荒川良々、三宅弘城、平岩紙、秋山竜次、桐谷健太、西田敏行
脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:勝野逸未、佐藤敦司
編成:松本友香、高市廉
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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