優れたOPアニメーションは作品を格上げする 『ホリミヤ』石浜真史監督にみるその重要性

 そして何よりも大事なのは、キラキラとした輝くような映像美だ。過去に石浜が手がけたEDを例に挙げると『べるぜバブ』のED3では、キャラクターデザインを本編から大きく変え、女性キャラクターたちに光あふれるエフェクトを多く当てることで、朝に放送されていたアニメらしく、爽やかな印象を与えている。

 その工夫は『ホリミヤ』でも活かされている。特に自ら絵コンテ・演出を手がけた1話では、多くの挑戦が見受けられる。中盤のシーンで堀と宮村がプライベートの姿を知り、その違和感を抱きながら学校で会話をするシーンでは、画面の両サイドを荷物が塞いでおり、絵が狭くなっている。その間で2人が会話をしているが、窓から差し込む光が特に印象的で、視聴者はその光景を覗き見るような感覚になるだろう。

 後半で石川が堀に対して告白するシーンでは、カメラのピントがキャラクターたちからズレてしまいぼやけたり、カメラがぶれることで、告白されている堀の動揺を示している。その一方では光が強く輝くことで、そのシーンが重くなりすぎることなく、それでいてしっかりと印象に残るように演出されている。

 この光が強めの映像美こそが、アニメ版の『ホリミヤ』の肝なのではないだろうか。近年は実写邦画の青春映画でもより強く採光し、画面全体がきらめくような作品が多い。そうすることで青春が持つキラキラとした印象を受けるためだ。本作からはその切実なまでの青春が強く感じられる。

 一方で、漫画原作の作品らしく、写実にだけこだわらず、漫画的表現も多用されている。瞳が白や茶色一色になることでキャラクターの表情を豊かにしたり、背景が抽象的な記号で埋められていたり、あるいは画面に小さな花や星が咲くことで、登場人物の感情を伝えている。漫画的な表現と、映像ならではの光の表現で、原作の物語をより楽しく、切実に視聴者に伝えてくる。

 原作であるコミックと比べると、3話まででもいくつかのエピソードが飛ばされており、物語構成を大胆にアレンジしている。だからといって原作を蔑ろにしているわけではない。むしろ、『ホリミヤ』という作品が持つ青春劇の魅力を、より強く感じることができるのではないだろうか。漫画からアニメに対する翻訳がうまく、そして石浜OPやEDの持つ魅力が味わえる。OP、EDという優れた短編から長編へ昇華され、光り輝く作品を目に焼き付けたい。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。平成アニメの歴史を扱った書籍『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』(KADOKAWA刊)が発売中。@monogatarukame

■放送情報
TVアニメ『ホリミヤ』
TOKYO Mほかにて、毎週土曜24:30〜放送中
声の出演:戸松遥、内山昂輝、山下誠一郎、小坂井祐莉絵、岡本信彦、M・A・O、近藤玲奈、山下大輝、福山潤、八代拓、千葉翔也、麻倉もも、小野大輔、茅野愛衣、寺崎裕香、金元寿子
原作:HERO・萩原ダイスケ『ホリミヤ』(月刊『Gファンタジー』スクウェア・エニックス刊)
監督:石浜真史
シリーズ構成・脚本:吉岡たかを
キャラクターデザイン:飯塚晴子
色彩設計:横田明日香
美術監督:守安靖尚、薄井久代
撮影監督:佐久間悠也
CGディレクター:宮地克明
編集:木村祥明
音響監督:明田川仁
音楽:横山克
制作:CloverWorks
製作:「ホリミヤ」製作委員会
(c)HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・「ホリミヤ」製作委員会
公式サイト:https://horimiya-anime.com
公式Twitter:@horimiya_anime

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