杉咲花、成田凌、若葉竜也はどう乗り越える? 『おちょやん』が描く、父親との関係性
高城百合子(井川遥)のような女優になる。千代(杉咲花)は芝居の道での成功を夢見て、監督を目指す小暮(若葉竜也)と共に鶴亀撮影所での日々を過ごしていた。しかし事は簡単ではない。一平(成田凌)の「現実は甘ないわ」の言葉を思い起こさせるように、千代はなかなか主演女優への道を拓けずにいた。連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)の第38話では、映画を愛するものたちの葛藤と挫折が描かれる。
主演を決める試験に通ることができなかった千代を慰めるカフェー「キネマ」の面々だったが、そこにテルヲ(トータス松本)の渡した“分厚い封筒”の中身、カフェー「キネマ」の割引券を持った鶴亀撮影所の現場スタッフらが訪れ、酒で盛り上がる。そこには映画について語り、飲み明かす熱い思いを持った仲間たちの姿があった。もちろん小暮も。小暮は、最後のチャンスで提出した脚本が通ったら千代を主役にすると意気込み、千代を高城百合子のような女優にしてみせると力を込める。
しかし千代の方は、滝野川恵(籠谷さくら)にお金の力で主役を奪われずとも、テルヲに水を差されずとも、自分には主演になるべく実力が足りないのだと悩み始めていた。そんな矢先、小暮の作品はボツに。テルヲはまた借金取りに見つかり、千代の預金通帳を持ち出して逃げようとする。そこに千代はばったり鉢合わせをしてしまうことに。
千代を大女優にしようと躍起になっていたテルヲだが、結局千代を裏切って金を持ち逃げしようとする姿には、視聴者までもが呆れると共に悔しく、苦しい思いをしただろう。この父親はいったい何度千代を裏切り、千代の行く手を阻むのか。
『おちょやん』では、それぞれの登場人物が父親との関係性をどう乗り越えていくのかが描かれてきた。千代とテルヲのようになかなか切れずにいる縁もあれば、一平のように分かり合えないまま死別することも。小暮のように夢を捨てて家を継ぐことを言い渡されてしまうことさえあるのだ。千代たちのそれぞれが親との関係を乗り越え、自分の人生と親の人生とで歩みを分かつ瞬間を模索する。
やっとつかみかけた千代の夢に暗雲が。今度ばかりはテルヲに迷惑をかけられず、千代が自分の夢に邁進することに集中してほしいと願うばかりだ。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/