“つぐみちゃん”を演じる加藤柚凪、5歳にして大女優の風格 『監察医 朝顔』加速する“胸騒ぎ”

『監察医 朝顔』加速する“胸騒ぎ”

 上野樹里が主演を務める『監察医 朝顔』シーズン2(フジテレビ系)が、1月25日に第11話を迎えた。

 「トンネル崩落事故発生」「朝顔が現場の責任者に」「消えた桑原の行方」「桑原の運命は?」。

 そんな第11話の予告テロップに誰もが、桑原(風間俊介)が事故に巻き込まれる展開を覚悟していただろう。以前からお化けが出ると噂のあったトンネルへと巡回に向かう桑原は、崩落事故に巻き込まれるものの、頭部を擦りむいただけで無事だった。しかし、その頃、東京では忍(ともさかりえ)と一緒に留守番をしていたはずのつぐみ(加藤柚凪)が行方不明になってしまうのだ。第12話の予告では必死に、つぐみを捜索する朝顔(上野樹里)と桑原、忍の思いも虚しく、つぐみの背後からトラックが近づく……。

 つぐみを演じる加藤柚凪(5歳!)は、以前から“大女優”と多くの視聴者から愛でられているが、第11話の言葉ではなく表情で家出の理由を訴える演技は、やはり“大女優”の風格が漂っている。第10話で桑原から「ママはね、死んじゃった人のために毎日一生懸命頑張ってる」とママを応援しようと教えられるものの、仙ノ浦から帰ってくるや否や仕事に向かっていく朝顔を心配そうにつぐみは見つめていた。自分が逃げ出せば、きっとママは仕事から解放されて、つぐみを助けに来てくれるーーそんな考えが、きつねのリュックを背負い真っ直ぐな眼差しで振り向く、つぐみの姿からは透けて見える。

 そして、仙ノ浦を舞台にした前半の30分は観ていて、非常につらい展開となった。浩之(柄本明)から里子(石田ひかり)と思わしき歯を調べるようにと預かっていた朝顔。第9話で「調べるのもう少し後にする。ガクンときちゃうと思うから」と平(時任三郎)に相談していた朝顔だったが、浩之にその思いはお見通しだった。「1日でも長く生きてほしい」という孫娘としての思いを伝える朝顔に、浩之から返ってきたのは、あまりにもリアルな本音だ。

 「1日でも長く生きてどうする。違うよ。違うんだよ、朝顔。いいんだよ。じいちゃん、もうじゅうぶん。朝顔には、じいちゃんの気持ち分からないよ。久しぶりに帰ってきた娘が津波に遭って死んで、自分だけがのこのこ、のこのこ長い間無駄に生きてる。あの時、里子じゃなくて俺が死ねばよかったんだ。そう思わない日はないよ。返してくれ。朝顔が調べてくれないなら、返してくれ。別の人に調べてもらうから。返してくれ……。里子を返してくれ……」

 心の底に溜まっていた澱みを掬うように、滔々と溢れ出す思いと涙。そこにオブラートに包むなんて心の余裕はなく、「津波に遭って死んで」と言葉はとても鋭利だ。2021年1月。もうすぐあの日から10年が経とうとしているが、浩之のように今も津波の呪縛に苦しんでいる方々がいることを忘れてはならない。

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