“読めない岩ちゃん”と再び対峙? 『名も無き世界のエンドロール』のコンゲームを楽しむ
また、本作は人気ジャンル「バディもの」の要素も担っている。一蓮托生の思いでふたりが闇を歩いていくストーリーは、ブロマンス的な要素も匂い立たせ、最近でも、玉木宏と高橋一生が顔を合わせたドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)や、岡田将生と志尊淳が共演した『さんかく窓の外側は夜』などがあった。これらのバディものは、役者同士の組み合わせがカギだ。その点本作では、岩田と新田の化学反応が非常に効いており、さらに彼らの“変化”が、作品のドラマ面を底上げしている。
ドッキリを仕掛けるのが大好きな明るい性格のマコトと、友の幸せを一番に考える心優しいキダ。ふたりはなぜ、非合法な手段まで講じて成り上がろうとするのか? 彼らの身に、一体何が起こったというのか? 岩田と新田が序盤、中盤、終盤で演じ方をガラリと変えており、好青年の序盤、冷徹な中盤、本音を爆発させる終盤と、難役に全力でぶつかっている。ふたりの演技合戦にも、ぜひ注目いただきたい。
そして、映画『名も無き世界のエンドロール』の後には、スピンオフドラマ『Re:名も無き世界のエンドロール ~Half a year later~』が控えている。こちらは、冒頭で説明したとおり、映画のラストから半年後を描く物語となっており、キダが交渉人として引き受けた仕事が、どんどん大事になっていき……という内容。原作者である行成薫が原案を書き下ろしており、補完に関してはバッチリだ。
こちらに関しては、キダを主軸に据えたハードボイルドな探偵もの的な要素が強められており、「幼なじみを組織から“足抜け”させたい」という依頼を受けたキダが、謎めいた女性ミチル(松井愛莉)と出会ったことで、自らの過去と現在、未来を見つめ直すさまが描かれる。
映画版には衝撃的な結末が待ち受けており、かつ岩田と新田の好演により、キダとマコトが魅力的なキャラクターになっていることから、彼らの“その後”を観たいと思う方も多いことだろう。一種のご褒美的な内容であるものの、原作者が参加していることもあり、それだけで終わっていないのが『Re:名も無き世界のエンドロール ~Half a year later~』の大きな魅力だ。
ミチルは、キダと初めて出会った際に「1日あれば世界は変わる」と語る。それは、キダの幼なじみのヨッチが大切にしていた言葉だった……。これは、奇妙な偶然なのか? それとも、彼女はキダも把握できていない“何か”を知っているのか? 映画を観た者だからこそわかる・気になるストーリー展開になっており、全3話を一気見してしまうのではないだろうか。
ストーリー以外にも、キダの無精ひげ姿や、たった一人で犯罪組織に乗り込んでいくさまなど、より個人にフォーカスした活躍が描かれているのも、嬉しいところ。岩田は、今後シリーズ化を期待する声も多く寄せられるのではないかと思えるハマりぶりを見せている。
そして、最大の魅力。それは、『名も無き世界のエンドロール』が、『Re:名も無き世界のエンドロール ~Half a year later~』で“本当のラスト”を迎えるということ。劇場版で描き切れなかったキダやマコトというキャラクターがより詳細に肉付けされており、特にキダにおいては自身の内面と向き合うというシーンも用意されているため、必見の内容といえる。
■SYO
映画やドラマ、アニメを中心としたエンタメ系ライター/編集者。東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て、現在に至る。Twitter
■公開情報
『名も無き世界のエンドロール』
全国公開中
出演:岩田剛典、新田真剣佑、山田杏奈、中村アン、石丸謙二郎、大友康平、柄本明
原作:行成薫『名も無き世界のエンドロール』(集英社文庫)
監督:佐藤祐市
主題歌:須田景凪「ゆるる」(WARNER MUSIC JAPAN / unBORDE)
制作プロダクション:RIKIプロジェクト、共同テレビジョン
配給:エイベックス・ピクチャーズ
(c)行成薫/集英社 (c)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
公式サイト:https://www.namonaki.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/namonaki2021
公式Instagram:http://instagram.com/namonaki2021
■配信情報
『Re:名も無き世界のエンドロール~Half a year later~』
dTVにて独占配信中
出演:岩田剛典、新田真剣佑、松井愛莉、山田杏奈、石丸謙二郎、金子ノブアキ、柄本明
原作:行成薫『名も無き世界のエンドロール』(集英社文庫)
総監督:佐藤祐市
監督:菊川誠
脚本:相馬光
主題歌:須田景凪「ゆるる」(WARNER MUSIC JAPAN / unBORDE)
(c)行成薫/集英社 (c)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
公式サイト:https://namonaki.jp/dtv/