杉咲花、「正チャンの冒険」の主役で奮闘 『おちょやん』千代のアドリブに込められた希望

杉咲花、「正チャンの冒険」の主役で奮闘

 急遽主演の正チャンに抜擢される千代(杉咲花)であったが、無事に初演を終え大成功を収めた。連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)の第28話では、清子(映美くらら)の足の怪我をきっかけに千代が「正チャンの冒険」の主役を演じるまでの奮闘と、千鳥(若村麻由美)との絆が描かれる。

 台詞を覚えていたのが千代だけだったため、初舞台にも関わらず主役を代役として演じることを提案された千代は、持ち前の前向きさとひたむきさでチャンスを掴み、主役に挑戦することを決める。だが困ったことに、経験のない千代には思うように声が出せず、舞台の後方まできちんと台詞を届けることができない。大きな声を出せば出すほど、怒鳴り声のようになってしまい芝居にならなかった。明日には初日の幕が開くという中、千代はその夜、ひとり劇場に残って稽古を続けるのであった。

 するとそこに千鳥が現れる。「教えにきてくれはったんやあらへんのだすか?」と問う千代に「何で私がそんなことしなきゃならないの」と冷たく言い放つ千鳥であったが、言葉とは裏腹に辛抱強く千代を見守る。とうとう最後には、舞台の基礎となる発声法を薙刀の木刀を使って指導した。「あなたの困った顔を見るのが楽しみだ」などと千代に対して“意地悪”を言いつつも、実は誰よりも芝居を大切に思っており千代のことも気にかけていた。この日、朝まで稽古に付き合ったのは千鳥ただひとりだ。2人きりの特訓が功を奏し、翌日の舞台で千代はしっかり声を出し、順調に舞台をこなしていく。

 だが、またしても問題が起こる。千代は小道具の短剣を忘れたまま舞台に立ってしまったのだ。咄嗟のことに焦る千代だったが、機転を利かせて台詞を変え、物語を大団円へと導く。「今まで辛いことばっかりやったかもわからへんけど、だんない(大丈夫)。きっとこれからはええことも仰山ある。みんな一緒に楽しい冒険続けよう!」。この時の千代のアドリブは、自身のこれまでの苦労に対して、前向きに生きていきたいという希望が込められていたように思う。さらにこの言葉は、芝居を観ていた(阿部純子)の息子や観客の皆にとって、さらには千鳥や座員たちにも希望のある未来を描いた台詞となっただろう。

 千代の真っ直ぐで底抜けに明るい姿が客席を明るく照らす。こうして千代の初舞台は大成功で幕を閉じるのであった。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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