『ブラック・ミラー』製作陣が贈る『さらば!2020年』 過激ゆえにリアルな風刺で得る学び
“サウスパークテイスト”な皮肉で見えてくる国民の意見
悪ふざけ満載で時に下品で、しかし現実世界のトピックスやニュースを皮肉めいて扱うのが上手いといえば、『サウスパーク』。本アニメは社会風刺やパロディ、ブラックなジョークでしか構成されていないといっても過言ではない、メタ要素満載のものだ。それこそトランプが当選された時の大統領選についても描いており(シーズン20)、最近では銃乱射事件や映画『ジョーカー』大ヒットの余波、コロナウイルスによるパンデミックにも切り込んでいる。お下劣にみえて、実はそれぞれのエピソードでのトピックスの扱い方やキャラクターのセリフや意見が、一般市民がその問題についてどのように考えるかという世論を反映している、ある意味教養になるアニメとも言える。“正直すぎて”過激ではあるが、生の声といえばそうだし、そういったオピニオンを知ることは当事国以外の人間がそれについて理解を深めるには手っ取り早い。『さらば!2020年』も、まさにそんな側面を持った作品なのだ。
なので、もちろん人は選ぶ作品でもある。特に皮肉か、そうでないかの境界線がわかるかどうかも、どれだけそのトピックスおよび国について理解できているか、という点に関わってくるだろう。しかし、それがわからないからこそ、その感覚を掴む糸口にするには、こういった少しくだけた作品を選ぶのも手だ。特に2020年は、今まで以上に海外情勢について考え合い、議論が活性化した年だったように感じる。だからこそ2021年に、より自分の意見を言えたり話題に対して理解を高めたりするためにも、まずはこの“クソ”みたいな去年を振り返るブラックコメディを手にとってみてはいかがだろうか。
■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。一時期アメリカはバークレーに住んでいた。Instagram/Twitter
■配信情報
『さらば!2020年』
Netflixにて独占配信中
監督:アル・キャンベル、アリス・マティアス
出演:サミュエル・L・ジャクソン、ヒュー・グラント、リサ・クドロー、クメイル・ナンジアニ、トレイシー・ウルマン、サムソン・ケイオ、レスリー・ジョーンズ、ダイアン・モーガン、クリスティン・ミリオティ、ジョー・キーリー