『バイプレイヤーズ』新作は経験を“継承”する物語? 田口トモロヲ、松重豊らの変遷を追う
「雄大な富士山の麓に森に囲まれた個性豊かな撮影所がある。そこは、目立ちはしないが渋く光る独特なたたずまいから“バイプレイヤーウッド”、略して“バイプレウッド”と呼ばれている。また、自然豊かでのどかな雰囲気から、“名脇役の森”とも呼ばれ愛されてきた」
ややや、一体、何が始まったのだろうか……それが率直な感想だった。1月8日からスタートしたドラマ『バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~』(テレビ東京系)のことである。“名脇役”と呼ばれるベテラン俳優たちにスポットを当て、彼らがそれぞれまさかの“本人役”を演じるなど、虚実入り混じった作劇と、普段はあまり目にすることのない役者同士のオフショット的な“掛け合い”が人気を集めた『バイプレイヤーズ』シリーズの第3弾となる本作。その内容に触れる前に、まずは『バイプレイヤーズ』の歴史を改めて振り返ってみることにしよう。
2017年1月から放送された『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』は、さまざまな意味で画期的なドラマだった。遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研(50音順)という、キャリアと実力を兼ね備えた“名脇役”たちをメインに据えたことはもとより、彼がなぜかシェアハウスで“共同生活”を営むというプロット……端的に言うと、おじさんたちの“テラスハウス”という企画なのだけど、これが存外に面白かった。「かつて共演機会があったものの、さまざまなトラブルによって映画自体が頓挫してしまった」という「虚」の部分の設定はともかくして、実際の彼らの関係性を反映しているであろう、おじさんたちの“ワチャワチャ感”が、視聴者には新鮮かつ好ましく思えたのだ。
その好評を受けて生み出されたのが、2018年2月から放送されたシリーズ第2作『バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~』である。スケジュールの都合で出演が叶わなかった寺島を除く5人が引き続き出演した本作の内容は、こちらも副題のごとく、「テレ東の朝ドラの出演が決まった彼らが、そのロケ地である島にやってくるも、なぜかスタッフはおろか人っ子ひとりおらず、そこでサバイバル生活を営むことになる」という、前作以上に荒唐無稽な物語となっていた。けれども、周知の通り、本作の放送中に、『バイプレイヤーズ』の中心的な存在であった大杉連が急逝。遺族、事務所、キャストの意向もあり、引き続き放送は継続されたものの、その後の展開は大幅に書き換えられ、最終的には全5話のドラマとして終了したのだった。虚実入り混じった、その「実」の部分が前面に出され、思わぬ形で“大杉漣への愛”、そして“役者という仕事への愛”を表明することになった第2作。それは、刻々とする変化する「今」が、現在進行形で刻み込まれた作品として、ドラマ史上例を見ない作品となったのだ。
そして、それから約3年の歳月を経て生み出されたのが、シリーズ第3作となる今回の『バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~』である。メインキャストは、遠藤憲一、田口トモロヲ、松重豊、光石研というおなじみの4人。しかし、今回はどうやら少々勝手が異なるようなのだ。冒頭で書いたように、今回の舞台となるはシェアハウスでも無人島でもなく、富士山麓にあるという架空の撮影所「バイプレウッド」である。というか、冒頭に引用したナレーションを、バイプレウッドの一室で、光石、遠藤、田口、松重が代わる代わる読み上げるという不思議な導入部となっているのだった。ナレーションは、さらに続く。
「しかし、今季に限って、森はのどかではなかった。民放各局の連続ドラマがバイプレイウッドで撮影されることになったのだ。そうなると否が応でも番組同士、ライバル心を燃やしバトルが繰り広げられる。一癖も二癖もあるバイプレイヤーたちが火花を散らす。これはバイプレウッドの100日間を綴るドキュメンタリー」
そして「2020年8月」というテロップが挿入される。いわゆる「コロナ禍」の真っ最中である。そう、本作はバイプレウッドで同年6月より巻き起こった“ある騒動”を記録した「ドキュメンタリー」ということになるらしい。ちなみに、バイプレウッドでそのとき撮影されている民放各局のドラマは、学園ドラマ『CTO』(主演:長谷川京子、りょう)、サスペンス『わたしの番です』(主演:原田龍二)、銀行ドラマ『大合併』(主演:向井理)、医療ドラマ『ドクターZ 5』(主演:観月ありさ)など、どこかで見たような気がしないでもない作品ばかり。そして、7スタでは、主演の役所広司をはじめ、勝村政信、渡辺いっけい、近藤芳正、柄本時生、志田未来、杉野遥亮の7人がチームを組む刑事ドラマ『チーム7』が、まさにクランクインしようとしているのだった。その第1回のゲストが、濱田岳という次第である。