杉咲花、『おちょやん』で体現する王道朝ドラヒロイン像 泣き笑いの演技で新たなステージへ

杉咲花、泣き笑いの演技で新たなステージへ

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説は、放送5週目あたりからグッと面白さが増す。多くの作品は主人公の幼少期から始まることもあり、主演を務める俳優が本格登場するのは第3週目からが定番となっている。主人公を取り巻く人物と時代に視聴者も慣れ、物語の方向性がはっきりしてくるのも、大体5週目頃。現在放送中の『おちょやん』もまさにそうで、ヒロイン千代が自分の夢に向かって一歩を踏み出したところだ。

 毎日放送される朝ドラは、ほかの作品と同じように「視聴する」というよりも、「生活の一部」に組み込まれている視聴者も多いことだろう。朝ドラに何を求めるかは人それぞれだとは思うが、毎日放送される作品だからこそ、朝の活力になるような物語を観たい視聴者が大多数のはず。自ずと、主人公は明るくポジティヴ、逆境にも果敢に立ち向かっていくキャラクター像がこれまで多かった。『おちょやん』の主人公・千代は、まさに王道の朝ドラヒロイン像を具現化したようなキャラクターとなっている。

 そんな千代を演じているのが杉咲花。本格登場してからまだ3週だが、毎話ごとに感嘆してしまう演技をここまで見せてくれている。朝ドラには『とと姉ちゃん』に高田充希演じるヒロインの妹役で出演、ドラマ・映画に主演作もあり、その演技力の高さは疑いようがなかったが、『おちょやん』竹井千代は今までのどの演技とも違う、まさに新境地と言えるものになっている。

 もちろん、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』、主演ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』、『無限の住人』、『パーフェクトワールド 君といる奇跡』、『十二人の死にたい子どもたち』、『青くて痛くて脆い』など、どの作品でもそれぞれ違う顔を見せてくれてはいた。ただ、どこか“陰”を背負った、多面的な人物というのが、これまで杉咲が演じてきたキャラクターの共通点としてあったと言えるだろう。

 一方、『おちょやん』千代はとことん“陽”の人物。千代が悩み、泣き、苦しむシーンもあるのだが、どこかカラっとした爽やかさ、その後にすぐに立ち直り前に進んでいく強さがある。千代の魅力、杉咲の芝居の凄さが溢れていたのが、第4週の第19話。天海天海一座の千秋楽に急遽役者として出演することになった千代が、自身の本音を役の台詞としてぶつけるシーンだ。

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