映画業界受難の2020年でも存在感抜群 ブラムハウス・プロダクションズの実績を振り返る

製作会社ブラムハウスの実績を振り返る

新鋭監督を見つける審美眼に長けたブラムハウス

 『パラノーマル・アクティビティ』のオーレン・ペリがそうだったように、ブラムハウスの作品は映画監督としての実績は少ない人物が手掛けることが多い。世界で2億ドルを超える興行収入を獲得し、アカデミー賞4部門にノミネート、そのうち脚本賞を受賞した『ゲット・アウト』(2017年)は、コメディアンとして活躍していたジョーダン・ピールの初監督作品だ。2020年に公開され興収1億2600万ドルを超えた『透明人間』のリー・ワネルは、ジェームズ・ワン監督による大ヒットホラー『ソウ』シリーズの脚本を手掛けてきた人物だが、初監督作品『インシディアス 序章』(2015年)もブラムハウスの製作である。ちなみにこちらも、製作費1000万ドルで興行収入は1億ドル超えを達成している。

『透明人間』(c)2020 Universal Studios. All Rights Reserved.

 彼らのようなアイデアあふれる新鋭監督を見つける審美眼も、製作費を抑える一助になっていることは間違いないだろう。監督やキャストのネームバリューよりも作品の面白さ、それまでにはなかった新たな風を起こすことでブラムハウスの作品は人気を獲得してきたのだ。そんな慧眼は、ジェイソン・ブラムがMIRAMAX時代に外国映画の買付で培ったものかもしれない。

M・ナイト・シャマラン、スパイク・リーなど大物監督の作品もプロデュース

 一方でブラムハウスは、M・ナイト・シャマランの『スプリット』(2016年)や『ミスター・ガラス』(2019年)、スパイク・リーの『ブラック・クランズマン』(2018年)などといった有名監督の作品もプロデュースしている。

『スプリット』(c)2017 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

 『スプリット』の前作である『アンブレイカブル』(2000年)の製作費は7500万ドルで北米の興行収入9500万ドルだったのに対し、『スプリット』は900万ドルで製作され、同じく北米の興行収入は1億3800万ドルだ。もちろん列車事故の惨劇から始まる『アンブレイカブル』と、ほぼ地下室のみで展開される『スプリット』では単純な比較はできないが、製作費を抑え大きな利益を上げるブラムハウスの手腕は見事としか言いようがない。しかも低予算であることを一切感じさせない出来栄えなのだ。

 『ブラック・クランズマン』も、製作費1500万ドルに対して興行収入9340万ドルと成功を収めている。内容の評価も高く、アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む6部門にノミネートされ、最終的に脚色賞を受賞したのは知っての通りだ。

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