『パージ』シリーズが描く恐怖の正体 B級映画的発想に現実世界が近づきつつある?

『パージ』シリーズが描く恐怖の正体

 『パラノーマル・アクティビティ』のジェイソン・ブラム、『トランスフォーマー』のマイケル・ベイらが製作を手がけ、累計世界興収が500億円を突破した大ヒットホラー『パージ』シリーズ待望の最新作『パージ:エクスペリメント』が公開されている。 

 ホラー映画の豊作年と呼び声高い本年、『ゲット・アウト』や『パラノーマル・アクティビティ』などハイクオリティな作品群を誇る“ホラー映画の工場”ブラムハウス・プロダクションが満を持して放つ大人気シリーズの最新作とはどのような内容なのだろうか。低予算・ワンシチュエーションで完結していた2013年の第1作から製作と世界観の規模を拡大し続けている本シリーズの魅力とともに紹介する。

シリーズの特徴“最悪の一夜”に潜む社会性

 21世紀、経済破綻を抱えたアメリカは新たな政党「アメリカ建国の父 NFFA」を迎えた。政権を握る彼らは犯罪率を1%以下に抑える名目下に、一年に一晩だけ殺人を含む全ての犯罪を合法とする“パージ法”を適用する。本シリーズは最新作を含む4作を通じ、アメリカ最悪の一夜“パージ・ナイト”を様々な立場にいる登場人物の視点から描いている。 

 すでにパージ・ナイトが定着して久しい近未来のアメリカ、防犯設備を販売し生計を立てる富裕層の一家がある訪問者をきっかけに体験する恐怖の夜を家庭内というワンシチュエーションで巧みに魅せたシリーズ1作目の『パージ』。続く2作目の『パージ:アナーキー』は自らを守る術を持たない貧困層の登場人物たちが、路上を舞台に復讐劇や群像劇も巻き込んで一夜を切り抜けるスリリングな内容だ。3作目の『パージ:大統領令』ではパージ法の廃止を掲げた女性大統領候補とパージ・ナイト下に暗殺を目論む陰謀者たちの攻防が展開されるなど、更なるスケールの拡大をみせた。 

 そんななか第4作目となる『パージ:エクスペリメント』の舞台は、パージ法始動前夜となる2018年のNYスタテン・アイランド。アメリカ全土適用を前に行われた戦慄の導入実験の様子を通してパージ法制定の裏側が暴かれる内容となっている。

 これまでも『ゲット・アウト』『ブラック・クランズマン』など社会問題を巧みに織り交ぜたエンタメ作品を手がけてきた本シリーズのプロデューサー・ジェイソン・ブラムは、パージ法のアイデア源はアメリカの社会問題にあったと語っている。「当時オバマ氏が主張していた銃規制法を議会ははねのけた。この出来事、そしてNRA(全米ライフル協会)が持つ不条理に対する私たちの思いはかなり率直に作品内に落とし込まれている。これは、アメリカが抱える銃にまつわる問題がどれほど危険で無意味であるかということを警告する物語なのだ」。パージ法を導入した新政党NFFAが最大のスポンサーとしてNRAを迎え入れていることが作中でも明らかにされている。 

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