木村佳乃らが選んだそれぞれのハッピーエンド 理性的に幸せを見つめたドラマ『恋する母たち』

『恋する母たち』は理性的なドラマに

「籍より暮らし」――。

 金曜ドラマ『恋する母たち』(TBS系)が、12月18日に最終回を迎えた。3人の母たちの恋は、“結婚”だけにとらわれない、それぞれの形での幸せを手に入れてハッピーエンドに。これぞドラマ、これぞフィクション、だからこそしばし現実を忘れて胸を弾ませることができた作品となったのではないか。

「人生最高のパートナーが配偶者とは限らない」

 杏(木村佳乃)と斉木(小泉孝太郎)の結婚生活は、お互いに愛情を抱いているのに、どこか噛み合わずにいた。何かと世話を焼きたがる杏と、自分のペースで進めていきたい斉木。パートナーにしてあげたいこと、してもらいたいことが、一緒に暮らしてみるうちにズレていってしまう。

 大人の結婚は「個」と「個」が十分に確立した状態をある意味で壊して「2人」を築いていかなければならない。1人で生きてきた斉木にとっては自分の感情をうまく伝えることが想像以上に難しかった。杏も長年息子と暮らしてきたからかそんな斉木へのコミュニケーションが母親っぽくなり、斉木の口からは「うっとうしい」「めんどくさい」という言葉が飛び出す始末。

 幸せになるために結婚をしたはずだった。でも、結婚をしたら幸せではなくなってしまった2人。丸太郎(阿部サダヲ)から「人生最高のパートナーが配偶者とは限らない」という金言をもらい、ハッとする杏。結婚相手としてはうまくいかなかったかもしれないけれど、不動産関係の資格や実務経験を活かして、斉木の仕事人生には寄り添えるのではないか。

 長く1人で生きてきて、または結婚に深く傷ついて、仮に「自分は結婚には向かないのではないか」と絶望した人であっても、お互いを尊重し合って一緒に生きていく方法はある。それを共に模索していくことができる人こそパートナーと呼べるのではないかと、杏&斉木カップルは教えてくれた。

「結婚しないで一緒に暮らそう」

 優子(吉田羊)は、取締役に昇進した喜びを真っ先に伝えたのは円満離婚をした元夫・シゲオ(矢作兼)だった。シゲオはいい小説を書くこと、自分は役員に昇格すること。結婚を手放して手に入れた新しい幸せを、お互いに称え合う2人。そんな両親を微笑ましく思いながら、応援する息子・大介(奥平大兼)。

 結婚という形、家族として共同生活を続けることだけが、幸せとは限らない。それぞれが幸せになれる、ちょうどいい距離感を探るうちに、離れて暮らしたほうがうまくいくと気づく場合もある。

 赤坂(磯村勇斗)への想いだって同じだ。くっついていることだけが愛ではない。赤坂が幸せになることを祈るからこそ、彼が決めた有馬(結城モエ)との結婚も静観しようと思った。だが、そんなとき優子の家のインターホンが鳴る。モニターには花婿衣装を着た赤坂が玄関の前で仁王立ちしているではないか。

 どうやら有馬も不倫相手がいて、その人との恋を昇華できていないまま結婚を利用していた様子。流されるように、結婚をしようとしていた赤坂は、そこで結婚を取り止め、優子のもとに走ったという。「エイヤって瞬間がない人生はつまらないよ」とこちらも丸太郎の言葉がよぎったに違いない。

 結婚も止め、会社も辞めるという赤坂。自分と付き合うことで、赤坂の出世街道も邪魔してしまうかもしれないという懸念も一気に消えた優子は、「結婚はしないで一緒に暮らそう」と提案する。「だって離れられないもん」とチャーミングに言う優子に、ようやく彼女の恋する気持ちが解放されたのだとわかる。

 人生には抗っても仕方のない「なるようになる」という大きな流れがある。でも、それをただ流されながら待つよりも、こちらにいい流れが引き寄せられるように自分を律し続けることができたら。優子のように時間はかかっても、本当に自分の欲しいものが手に入る瞬間がやってくるかもしれない。

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