木村佳乃らが選んだそれぞれのハッピーエンド 理性的に幸せを見つめたドラマ『恋する母たち』

『恋する母たち』は理性的なドラマに

「誰が何と言おうと世間が後ろ指さそうと、一緒にいよう」

 杏と優子の「結婚」だけにとらわれない幸せを見つけたものの、やはり「結婚はいいものだ」と教えてくれたのは、まり(仲里依紗)と丸太郎だった。なかなか離婚ができないまりを空港まで迎えに行った丸太郎。

 丸太郎を守りたくて1年以上距離を取ってきたまり。離婚できていないのに丸太郎に会ったら迷惑をかける。そう頑なになっていたまりを「誰が何と言おうと世間が後ろ指さそうと、一緒にいよう」と包み込み、自分の家に連れて行く。

 丸太郎の家には、まりが本当にしたかった子育ての風景があった。協力して取り組む家事&育児、お互いにマッサージをし合って労をねぎらう……。繁樹といるときとは全く違う笑顔のまりを見て、息子・繁秋(宮世琉弥)は「離婚はしない」と言い張る父・繁樹(玉置玲央)に直談判する。意地を張って固執することで、みんなをちょっとずつ不幸にしていることがあるのだと。

 これまで全く向き合ってこなかった繁秋の言葉で、繁樹もようやく目が覚める。自分の求めていたタワーマンションでの何不自由ない暮らしが、まりにとっての幸せではなかったこと。それが異なっていると気づいた今、できることは力づくで掴んでいた手を離し、彼女自身が自分で欲しいものをつかめるようにしてあげること。

 不倫ドラマというと、愛欲におぼれていくさまが描かれがちだが、『恋する母たち』はもっと理性的な幸せを見つめるドラマだったように思う。そして3人の母たちを同時に描くことで、その幸せという概念そのものも多様化していることも伝えてくれた。

 パートナーと戦友のように共に歩いていきたい人、恋人のように互いを高め合いたい人、同じ目線で子どもたちの可能性を見つめていきたい人……それが「結婚」という形に落ち着く人もいれば、そうではない場合もある。「結婚」はあくまでも、幸せになる手段であり、目的ではない。

 選んだ道がちょっと違うと思ったら、引き返してみたり、別の道を探したり。丸太郎のように4回もやり直す人だっていていい。もちろん母ともなれば、子どもたちの状況に応じて、エイヤと動き出せないタイミングもある。

 しかし、母になったからといって、自分がもっと幸せになる道を諦める必要はない。どんなに時間がかかってでも、もっと自分らしく笑って過ごせる環境を引き寄せていくことはできるはず。キラキラと輝く3人を見て、これから美しい母たちがもっと増えていくのではないかとワクワクした。

■放送情報
金曜ドラマ『恋する母たち』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:木村佳乃、吉田羊、仲里依紗、小泉孝太郎、磯村勇斗、森田望智、瀧内公美、奥平大兼、宮世琉弥、藤原大祐、渋川清彦、玉置玲央、矢作兼、夏樹陽子、 阿部サダヲ
原作:柴門ふみ『恋する母たち』(小学館 ビックコミックス刊)
脚本:大石静
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
演出:福田亮介
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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