“汚れキャラ”ミニオンという発明 今だからこそ学びたい『怪盗グルーのミニオン危機一発』のメッセージ
今だから学びたいメッセージ
本作が注目されるべきなのは、ミニオンの設定だけではない。その底抜けのポジティブさと、様々な問題を受け入れるべきだというメッセージも評価されるべきだ。
例えば、冒頭では誕生日パーティにプリンセス役のイベント俳優がこないという問題が勃発するが、その状況を受け入れ、グルーが女装して結果的に家族の絆が強まる。
ルーシーがオーストラリア行きの飛行機から堂々と飛び降りる際も、乗客と客室乗務員は笑顔で送り出し、酸素マスクが降りてくる。ミニオンが生物兵器になって戻ってきても、冷静に解毒剤を作って問題解決にあたり、最後はハッピーエンドになる。
つまり、問題が起こっても受け取り方によってマイナスをプラスにすることは可能であり、対応策もあるというポジティブなメッセージが散りばめられているのだ。
思い返せば、これは『怪盗グルー』シリーズに共通する設定かつメッセージである。前作の『怪盗グルーの月泥棒』では、得体のしれないミニオンを受け入れ、娘3人を受け入れ、悪党になりきれない自分を受け入れる。娘3人も皮肉屋のグルーを家族として受け入れ、ミニオンを受け入れる。まるで抵抗することを知らないかのように、様々なことを受け入れ、彼らは本当の家族となり幸せを掴む。
第3作の『怪盗グルーとミニオン大脱走』だってそうだ。お金がないことを受け入れ、金策のためにフリーマーケットを開く。双子の兄弟の存在をすんなりと受け入れ、家族の絆を深める。『大脱走』に至っては、現状を受け入れられずに過去の栄光に縋り付くしかないヴィランを登場させてまで、現状を受け入れることの大切さをダメ押ししている。
抗うな、受け入れろ、前に進め、悲観するな、打開策はある……。このメッセージを繰り返し伝えているのだ。
そして、この「受け入れる」というメッセージは、新型コロナウイルスが大流行し、訪れた変化をどう受け止めれば良いのかで悩む私たちの心に深く届くだろう。
変化は止められない。過去を羨んでも、過去には戻れない。ならば、できるだけポジティブに、時には長いものに巻かれつつ変化を受け入れる。打開策はある、その先には幸せがつながっている。
綺麗事を並べてしまった。しかし、『怪盗グルーのミニオン危機一発』は必死にその重要性を説き、私たちに幸せへの近道を道標してくれているのだ。オナラ砲の見送りと共に。
■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter
■放送情報
『怪盗グルーのミニオン危機一発』
日本テレビ系にて、12月18日(金)21:00〜22:54放送(※本編ノーカット放送)
監督:ピエール・コフィン、クリス・ルノー
声の出演:笑福亭鶴瓶、芦田愛菜、中島美嘉、山寺宏一、宮野真守、中井貴一
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