『この恋あたためますか』四角関係は1組と2人に 森七菜と中村倫也は急展開続きの後半戦へ
「特別になりたい」
恋をするとは、その人の特別になりたいと願うことだ。その人を幸せにしたいと強くなれるということ。自分を飾ることなく本音が言えるということ。そして「社員と社長」という大義名分がなくなっても、また会えるということ……。
火曜ドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)第5話は、恋の四角関係が一気に動き出す。新谷(仲野太賀)は樹木(森七菜)に、里保(石橋静河)は浅羽(中村倫也)に、それぞれ想いを告白。浅羽への恋心を封印し、「社員と社長」として毎日会える関係を選んだ樹木だが、新谷の告白をすぐに受け入れることはできない。もちろん新谷も、樹木が同じ気持ちでいるとは思っておらず、「今すぐじゃなくていい、いつか……」と、寄り添う優しさを見せる。
樹木にとっても、新谷は一緒にいて楽しい相手。でも、樹木の心の中にいる「特別な人」は相変わらず浅羽なのだ。だから、とっさに出たのは「ありがとう」の言葉と、なんとも曖昧な笑顔だった。
一方、里保は浅羽との復縁に成功。どうやら里保と浅羽が過去に恋人としてうまくいかなかったのは、里保が「いい彼女」になろうとして溜め込んでようだ。今度は素直に「ワガママを言う」と宣言する里保に「覚悟しておく」と言って笑う浅羽。
だが、里保の「なぜ甘いものが嫌いになったの?」という問いに対して「食べ過ぎたから」と話すのだが、どうも歯切れが悪い。本音で付き合っていきたいという里保に対して、浅羽の心は同じところを向ききれていないように感じる返答だ。
その本当の理由は、同じ質問をした樹木への答えで明らかになる。里保に伝えたように「食べ過ぎた」と話す浅羽の言葉を、嘘だと言って食い下がる樹木。浅羽は怪訝な顔をするも、樹木の勢いにつられてクリスマスケーキの苦い思い出を語り始める。
家族団らんを心から欲していた幼少期。唯一、両親が顔を合わせるクリスマスに想いを込めてケーキを作ったのに食べてもらえず、その日から甘いものもクリスマスも嫌いになったと。
樹木には「本音」を、里保には「建前」を。だが、「特別な人」は里保で、樹木はあくまでも「社員」。そのちぐはぐな状況に、視聴者としてはやきもきせずにはいられない。さらに、秘密裏にすすめていた神子(山本耕史)による社長解任劇。知らせを聞いて、樹木はとっさに浅羽の元へ走り出す。
里保は恋人で、新谷も友だちだから、社長じゃなくなってしまったとしても浅羽にいつでも会える。でも、自分は「社員と社長」じゃなくなったら会える理由もなくなってしまう。恋心を諦めてまで、必死に掴んだ唯一の繋がりなのに……と。
その手には、約束のりんごプリン。樹木がスイーツを作るときは、いつだって浅羽のことを想って作ってきた。浅羽に「うまい」と言ってもらいたい。そして、そんな日々が続くのが樹木にとっての夢だった。
涙を浮かべて訴える樹木の様子からも、浅羽への想いは明らか。だが、浅羽は切ない眼差しで「ありがとう」と告げるだけ。その言葉に、樹木が新谷に告げた「ありがとう」がリフレインする。そして、受け取ってもらえなかったりんごプリンは、かつて浅羽が家族に振り落とされてしまったクリスマスケーキとも重なって見えた。
食べてもらえなかったスイーツは、届かなかった愛情なのだ。笑顔になってほしい、一緒に食べて幸せを分かち合いたい……私たちはスイーツを贈るときに期待しているのは、そのものの美味しさだけではなく、相手に愛情が伝わること。それを知っているからこそ、無残に床に落ちたスイーツに、「もったいない」とは別の角度で心が痛む。